・プロローグ・
『彼』が酒場に入って行くと、既に酒場は今日の仕事を終えた男たちで一杯になっていた。
そんな中、彼はカウンターに席を確保すると、酒と料理を注文し、それでほっとしたように一息ついた。
「よお、久しぶりじゃん」
食事を始めた彼に、客の一人が話しかけてきた。
「ああ、久しぶりじゃな。・・・ふい〜、この年だと長旅も辛くなるわ」
「3ヶ月ほどご無沙汰だったけど、どこかへ仕事かい?」
「まあ、そんなもんだ。どこぞの国のお金持ちが、彼を称える歌を作ってくれとさ。始めは断ったんだが、どうしてもと懇願されてな。まあ、相場の3倍は料金をふっかけてきたから、これでおあいこじゃろうて」
そう言って彼は豪快に笑った。
「相変わらずせこい商売してるなぁ」
話しかけた客のほうも苦笑いをする。
「ところでよ、3ヶ月前の続き、そろそろ聞かせてくれてもいいんじゃないかい?」
ひとしきり笑った所で、客のほうが彼にそう切り出してきた。
「おお、そうだな。じゃあ、続きを語るとするか」
そう言うと、彼は食事の最後の一口をほおばり、酒を一口飲むと、、楽器を構えた。
「では、フーイ、クティル、メイムの3人の旅の話じゃ。確か、『森の国』アクランテへ向かう所だったな・・・」
〜花の月、10と5の日。「ルミワレス」の街、「砂の船」亭にて。
『語りたくない語り部』ソーラス、再び語らん〜