「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・。」
どのくらい、こうしているだろう…
近所の公園で、何をするでもなくただベンチに座り、僕らは月を眺めている。
きっかけは、そんなにたいした事じゃない。
夕食を食べて、適当にくつろいで、ふと外を見た時、それが見えただけだった。
「今日は満月か…」
天気もよくて、まん丸な月がよく見えた。
「そうですね。」
僕の横で、セリオが同意してくれる。
「……とても、きれいですね。」
「うん…きれいだ…」
今度は僕が同意する…本当に、同意だったのかは今は自信がない。
「お月見にいこう、セリオ」
「お月見、ですか?」
僕の提案に、セリオはちょっと首をかしげて訊いた。
「せっかく月がきれいなんだから、もっといい所で見ようよ」
そういって手を差し出す僕。
セリオは何か言いたそうだったけど、
「はい、マスター。」
と僕の手を取った。
家からそう遠くないところに、その公園はある。
結構大きな公園で、彫刻なんかも飾られた、憩いの場、という所だ。
この辺りには、2階を越えるような建物はないから、空を眺めるにはちょうどいい。
まだ外は肌寒いけど、その分空気が澄んでいて、月がよく見えた。
そんな公園の一角のベンチに、二人並んでただ月を眺めていた。
「月にはね、ウサギがいるだんよ」
「…マスター、信じているんですか?」
「ん?知ってるようなこと言うね」
「はい、データ上は…でも…」
「いるかもしれない、よね」
「はい、きっと、カニもいるかもしれません。」
「きこりとか…」
「魔女なども…」
そんな他愛のない話も、楽しかった。
「セリオ、寒くない?」
どのくらい経っただろう。肌寒さを感じた僕は、そうセリオに訊いた。
「私は、大丈夫です。マスターこそ、寒くありませんか?」
そういってセリオが身を寄せてくる。やわらかい暖かさが、僕に伝わってきた。
「ん…ありがとう、セリオ」
顔をむけると、やさしく微笑むセリオがいて、僕は……
「さて!そろそろ帰るか」
照れ隠しに、ちょっと大げさにそういって立ち上がる。
「…はい、マスター。」
そういって、セリオも立ち上がる。
『本当に、ありがとう、セリオ』
そんな二人を、月だけがやさしく見守っていた…
<あとがき>
いや、月がとってもきれいだから…
満月の夜は、
人を、狂わせるものです…