− その8 愛しき君よ… −

 さて、今日は初めての講義の日である。
 ここの講義の教授はちょっとは有名な人で、今まで調査の為に海外にいたのだそうだ。
 そんなわけで5月も半ばというころになって初めての講義となった。

「失礼します。」
席に座ってぼんやりと外を眺めていた僕は、その声に振り向いた。
「えっ?セリオ?」
 そこにはセリオが座っていた。
「はい。」
「ん?そんなに珍しいか?」
 答えは2つ返ってきた。セリオの隣に長髪の男が座っている。
「い、いや、何でセリオがここにいるのかと思って…」
 ちょっと動揺していた僕は正直に答えていた。
「ん?ん?あっ!お前もセリオを持ってるな?!」
 (ドキーーン!)なんでわかるんだ?!
「ふふふ、隠すな、隠すな。なぁセリオ?」
「はい。」
 終始ペースを取られつつもその後はいろいろと話した。
 性格は違うが僕と同じタイプの人間みたいだったから話もあった。

 帰り道、僕はさっきのことを思い出しながら歩いていた。
 メイドロボを連れて来ていることについては、
「何か言われたってバイクと同じだっていやぁいいのさ…ちっとヤだけどな」
 と、いわれた。そうゆうものだろうか?
「それに、な…」
「え?」
「俺が帰るまで、こいつは部屋で一人で俺を待ってるんだぜ。何か、可哀想だろうが」
 そう言ってテレながらセリオをぐりぐりとなでる。セリオは困ったような、うれしいような表情を浮かべていた、様に僕には見えた。
 その一言が、僕の胸に突き刺さっている。
 考えてみれば、僕はまだセリオをどこにも連れ出してない。
 昼間のうちに買い物に出かけるぐらいしか、セリオは外出していない。
 それに昼間は、僕は学校があるからいつもセリオは一人だった。
「はぁ…」
 何度目かのため息…
 ふと、目の前を横切る桃の色…
 見上げると、そこには桜の木があった。
「さくら、か…」
 そう言えば、僕はお花見という物をしたことが無かった。
「……よし!」

「ただいま、セリオ」
「は〜い…お帰りなさい、マスター。」
 いつもの様にセリオが迎えてくれる。
 いつもの様に嬉しそうにセリオが迎えてくれる。
 そうか、だからセリオはうれしそうに僕を迎えてくれるのか…
「ありがとう、セリオ」
 そう言ってセリオを抱きしめる僕。不思議と、自然にそうしていた。
「?、マ、マスター?」
 わけがわからない、といった風のセリオはそんな慌てた声を出す。
「まぁまぁ、しばらくこうさせてよ…ところで、今度の週末なんだけど…」


<あとがき>

 今日、サクラを見ました。
 春だなぁとおもいました。
 セリオとお花見いきたいなぁ。
 そんなことを考えて、書きました。
「でも外雨じゃん」
 …だめっぽいなぁ(笑)