小樽水上オルゴール堂シリーズ・番外編
「オルゴール堂の年越しと年明けと」
(Episode:HM−13b4・芹凪、HM−13f375・美菜子(ToHeartオリジナルキャラ)
/連載SSシリーズ1作目・番外編第6話)
年の瀬も押し迫ったある日の事。
年越しの準備で忙しい小樽の街。水上オルゴール堂とて例外ではなく・・・。
「おーい、美菜子〜! 工房の掃除終ったか〜?」
片づけをやっているのか、山のように荷物を抱えた宗一郎が、工房の入り口から顔をのぞかせた。
「あ、今終わったよ〜」
工房の奥から、顔までホコリだらけにした美菜子が顔をのぞかせた。
「よーし、んじゃ次、店の方頼むな〜」
「うん、いいよ〜」
そのまま美菜子は店の方へ、宗一郎は母屋の方へと歩いて行く。
「芹凪〜、家の掃除どこまで終った〜?」
リビングの方に顔を出した宗一郎は、そこで片づけをしている芹凪に声をかけた。
「お台所とリビングがもう少しで終ります。あ、マスター、それが終ったらお風呂と玄関をお願いできますか?」
「お、解った〜。それと、美菜子が終ったらそっち手伝ってもらいな〜」
「解りました」
宗一郎はそのまま抱えた荷物を持って外に出ると、物置にそれをしまい込んだ。
「・・・ふぅ、これでよし」
ふと見上げると、先程まで広がっていた青空が、少し曇り加減。
ちらほらと、粉雪も降っている。
「・・・明日、初日の出は晴れるといいけど・・・」
粉雪は、時折吹いてくる風に吹かれて、舞っていた。
「・・・さて、後は風呂場と玄関か」
宗一郎はもう一度空を見上げると、家の中に戻って行った。
「・・・はい、これでお掃除はおしまいです」
芹凪がそう言って、水上家の大掃除は終った。
「ふぅ、さすがに疲れたなぁ。・・・って、芹凪、美菜子、お前らも掃除した方がいいんじゃないか?」
「「え?」」
見ると、芹凪も美菜子も、頭から足の先までホコリだらけになっていた。
「あら〜、ホントだよ〜・・・って、あれ? でも・・・」
「・・・あの、マスターもホコリだらけですが」
「おや」
宗一郎もやはり、同じようにホコリだらけになっていた。
「取り敢えず、風呂だな」
「そうですね」
「そうだね」
思わず顔を合わせて苦笑いする3人。
「じゃあ、次は年越しそばとおせちとお餅の準備ですね」
それぞれが風呂から上がった後、次は食べる物の準備に。
「えっと、じゃあ私はおせちの準備をします。ミナちゃんは餅つきをお願いね」
「うん、解った」
美菜子は、早速蒸してあったもち米を相手に格闘を始めた。
「んじゃ、そばを打つか!」
「はい、頑張って下さい」
宗一郎は腕まくりをして、そばを打つ準備をする。
芹凪も台所に入って、おせちの準備を始めた。
そして、数時間後。
「やっと、終ったな」
「ええ、お疲れ様です。ミナちゃんもお疲れ」
「うん、お疲れ〜」
にっこりと笑いあった3人の前には、とても3人で食べる量とは思えない程の、そばにお餅におせちの数々。
実は、商店街の商工組合の決まりで、商工組合みんなでにぎやかに年越しを過ごす為、毎年持ち回りで集まる所の担当を受け持っている訳で。
で、今年は水上オルゴール堂のお店前が集まる場所になったという訳。
「お〜、宗君、せいが出るなぁ」
「ありゃ、加藤さん、一番乗りですよ」
早速、加藤さんがふろしき包みを抱えてやって来た。
「これ、まあみんなで食うべ。鮭トバ作っといたからよ」
「あ、どうもすいません」
芹凪が受け取り、入れ代わりに美菜子が湯のみを加藤さんに手渡す。
「ハイこれ、甘酒だよ」
「お〜、ミナちゃんありがとうよ。・・・ん〜、体があったまるよ」
「ほら、ケンちゃんも甘酒どうぞ」
「あ、どうもすまねぇっす」
そんな感じで、続々と店の前に集まってくる商工組合の人達。近所の人も集まって、ちょっとした集まりになっていた。
ゴーン・・・。
ゴーン・・・。
みんなで年越しそばをすすりながら、おしゃべりに講じている時。
「あ、除夜の鐘が鳴り出したよ」
「じゃあ、もうすぐ年が明けるね」
鐘はきっちり108つ。
「年明けだな」
「そうですね。それでは・・・」
『あけましておめでとうございます。今年もよろしくね』