せりなちゃんが行く!シリーズ
プロローグ「水無月せりな、参上」
(Episode:水無月せりな(オリジナルキャラ)/こみっくパーティー&ToHeart
/連載SSシリーズ2作目・プロローグ)


時:水曜日、0800。
所:県立三月高等学校、通学路。


「おはよー」
「おっす」
 どこにでもありそうな登校風景。
 道をのんびりと歩いて行く者、眠そうに目をこする者、友人とおしゃべりに花を咲かす者。


「おっはー」
「やほー、せりせりー」
「・・・あのさ。前から言ってるんだけど。その、『せりせり』って、止めてくれない?」
 そして、ここにも。
 後ろから追いついてきた友人に挨拶をする、朱色の長い髪の持ち主の女生徒が一人。
「じゃあ、『せりの助』」
「ヤダ」
「じゃあ、『せりえもん』」
「ヤダ!」
「じゃあ、『せりの信』」
「ヤダ!!」
「じゃあ、えっと、えっと・・・」
「だからー、何でふつーに『せりな』って呼んでくれないの!?」
「え〜、だって、面白くないじゃん」
「私はもっと面白くない! ちゃんと、『水無月 せりな』って名前が有るんだから!」
 せりなはそう言って、ほっぺたをぷーっと膨らませた。
「じゃあ、『セリオ』ってあだ名はどう?」
「・・・あのさ。美紀子ちゃんが、ゲームとか同人とかにはまってるのは別にいいんだけど。お願いだから、ゲームのキャラの名前を私のあだ名に使わないでくれない?」
「だって、本っっっっ当に、そっくりなんだよ? せりなとセリオって」
 下から覗き込むようにして、美紀子と呼ばれた女生徒はせりなを見る。
「この朱色の長い髪の毛。すらっとした体のライン。これで耳カバー付けたら完璧じゃん?」
「美紀子ちゃんの趣味を私に押しつけないでよ」
 そう言ってせりなはすたすたと歩いて行ってしまう。
「あ〜、せりなっち! 置いてかないでよ〜!」

 水無月せりな。16才の、花も恥じらう乙女。
 これからやってくる運命を、その時彼女はまだ知らない。

− 続く −