「セリオと僕」
(Episode:HM−13・セリオ(ToHeart)/投稿作品/投稿者:北村信治さん)


− その1 −

 大学合格の記念になんか大きなものを買ってやるぞ、といわれた僕は迷わなかった。
「じゃセリオ」
 即答である。
 僕の両親はきっかり5秒は固まっていた。

「車は?」
「健康のために歩く。だからセリオ」
「マンションでは…」
「まだ定住するつもりはない。だからセリオ」
「PCとか…」
「セリオがいれば必要ない(うそ)」

 他にもさまざまな条件が提示されたが、僕は譲らなかった。
 それでも新品を、というのはさすがに気が引けたので中古でいいと譲歩(?)した。
 初めての一人暮しということもあってか、やはり不安なのだろう。
 最後には「わかった」といってくれた。しぶしぶ。
 そんなわけで、僕はセリオと暮らすことになった。

 で、夕方。僕の家にセリオがやってきた。自分で歩いてだ。
「メイドロボって配達されるんじゃないんだ」
「いえ、新機の場合はほとんど配達です。ただ…」
「ま、いいや。はいって」
「…はい。」
 まだ何か言おうとしていたセリオを遮って招き入れる。
 横をとおるとき、軽く観察してみる。
 荷物は多くない。ちょっと大きめの鞄が二つだけ。メンテ用PCと着替えというところか。
 ぱっと見で変なところはない。良く見る普通のセリオでカスタム化もされてないようだ。
 服装もこれまた良く見るメイド服である。なんとなくうれしい。
「前の人が特に手を入れたとことか、ある?」
「いえ、特にはございません。」
 うん、前の持ち主ってのは良くわかってる奴だった様だ。僕は少し安心した。

 その後二人で話し合って細かなことを取り決めた。
 固体名はセリオ(デフォルト)、僕のことはマスターと呼ぶこととかだ。
 それから早速料理の腕を披露してもらったり、肩たたきをしてもらったりしていたらすっかり晩くなってしまった。


「じゃ、寝るか。押入れに布団があるから。二組」
「はい。…こちらがマスターの布団ですか?」
「うん。そっち側にひいてくれる?」
「わかりました。」
 今日からはセリオもいるから端の方に敷かないといけない。
 いっしょに寝る、というのもありだけどいきなりはやめておこう。
 そんな事を考えていたら僕の分の布団が出来あがった。
「では、おやすみなさいませ。」
 そう言って自身は押入れに入りこんで戸をしめた。
「…………あの……セリオ…さん?」
 あまりのことに思わずさん付けで呼んでしまう僕。
「はい。何でしょうか。」
 少し戸をあけ、顔だけ出して聞いてくる。着替えていたようだ。
「えっと、布団は、ひかないの?」
「そちらがマスターの布団ではなかったのですか?」
「いや、そうだけど…君の分は?もしかして押入れで寝るの?」
「はい。」
 当たり前だけど即答した。しかもそうするのが当然のような雰囲気がある。何かいや〜な予感がした。
「それって、前のやつ、か?」
「はい。ロボットは押入れで寝なくてはならないといわれました。」
 訂正、前の持ち主は変な奴だ。人のことは言えないが。
「まぁ、わかるけど…今度からは隣で寝てくれる?」
「わかりました。少々お待ちください。」
 そう言って顔を引っ込め、着替えてから自分の分の布団を敷いた。

「じゃ、おやすみ。セリオ」
「はい、おやすみなさいませ。マスター。」
 多少ギクシャクしたが今日も無事に終わった。明日からはセリオとの新しい生活が始まる。
「他にも変な癖がついてなけりゃいいけど…」
 一抹の不安を感じつつ、そのうち僕は眠り込んでいた。


<あとがき>

 ふと、思いついたネタがこんなにふくらんで・・・
 なんか最初に考えてたのと方向性すら変わっているような?
 あんまり細かいこと気にしないで書いてきます。
 続くかどうかはわかりません。
 つづけて、といってくれたら前向きに検討します。
 テーマ(?)は、変なセリオとの生活。
 もっとも、セリオ自身はまともなんですが・・・