小樽水上オルゴール堂シリーズ・番外編
「芹凪と美菜子の秘密事」
(Episode:HM−13b4・芹凪、HM−13f375・美菜子(ToHeartオリジナルキャラ)
/連載SSシリーズ1作目・番外編第1話)
ある日の事。美菜子が宗一郎に頼まれた買い物をすませた帰り。
「・・・あれ? 新しい店が出来てるよ?」
いつも通る裏道に、美菜子が見たことのない店が出来ていた。
「『甘味処・兎屋』。・・・甘味処かぁ・・・」
そろそろ、季節的に小樽にも雪がちらつこうかと言う季節である。
暖かいお汁粉などがおいしい時期だ。
「・・・一杯だけなら、いいよね」
美菜子は自転車を止めると、店に入って行った。
「いらっしゃいませ〜。一名様、ご案内〜」
店に入ると、割烹着の店員が出迎えてくれた。
店の外見もそうだったが、中は純和風の日本家屋を今風にアレンジした、実におしゃれな作りだった。
「へぇ・・・いい感じだね〜、この店」
一瞬にして、美菜子はこの店が気に入ってしまっていた。
しかも、結構人気があるのか、地元の高校生とか、買い物途中の主婦らしい人達でにぎわっていた。
「あの、申し訳ありません、ただいま混んでおりまして・・・相席でも宜しいですか?」
「え? ああ、別に良いよ〜」
「申し訳ありません。では、こちらにどうぞ」
案内された先では、女性が一人、本を読んでいた。
「すいません、こちらの方と相席をお願い致します」
「はい、構いませんよ」
そう言って顔を上げた女性は・・・。
「せ、芹凪姉ちゃん!? 何でここに居るの?」
「み、ミナちゃん!? あなたこそ、何で?」
「・・・と言う訳」
「なるほど、やっぱり姉妹って訳ね・・・」
美菜子は、芹凪にこの店に来た過程を話した。
「実はね、私も夕ご飯のおかずを買い出しに来たのよ。で、その時にお汁粉のおいしそうな匂いがしたから、こっちに来て見たの」
「なるほどね〜」
そういう二人の前には、この店のトップメニューになっている、『兎屋特製お汁粉』があった。
「じゃ、さっそく」
「頂きましょう」
そして、ぱくっと一口。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お、お・・・」
「おいしい〜!!」x2
甘い物には目がない二人の事。
一瞬にして、この店のお汁粉が「お気に入り」に追加されていた。
「でも、このお店、宗さんにも教える?」
食べおわった後、サービスの昆布茶を飲みながら美菜子が芹凪に聞いて来た。
「うーん・・・でも、マスターって、甘い物そんなに得意じゃ無かった筈よね・・・」
思案顔の芹凪。
「じゃあさ、このお店は二人だけの秘密って事で」
「・・・そうね」
そう言って、にっこりと微笑む二人。
その日の夜、妙にご機嫌な二人をみて、ひたすら首をかしげる宗一郎氏が居たと言う。