「メッコールですか〜。何年ぶりだろ?」
マサシの目が懐かしそうなそぶりを見せる。
「そりゃあ、な。缶飲料自体も最近は見ないしね」
「ナオキよ〜、おめえぐらいだよ。家中缶だらけにしてストックしてるのは」
カズヒロが笑いながらツッコミを入れる。
「やっぱ僕だけか?」
これは俺の趣味だけに、たとえ家が缶で埋まってもやめる訳にはいかない。
カズヒロも分かってる。だから笑いながらツッコミを入れるのだ。
そう言う僕も、そして聞いていたマサシも笑いだす。
遅い夕食。新しい同行者を見つけ、会話が弾んだ。
「あ、そういえばナオキさん」
「ナオキでいいよ」
「じゃ・・・ナオキ」
「何だい?マサシ」
「その『行く』って言ってた喫茶店って?」
「ああ、『Cafe'Alpha』のことね」
「カフェ・アルファ?」
「この先、西の岬にあるんだよ。僕たちはここに行くわけ」
「喫茶店に行くために旅してるんですか」
ちょっとびっくりした表情をするマサシ。
無理もない。いくら時代がのんびりしたと言ったって、ここまでする人はそうそういない。
「まあな。それだけしたくなる店なんだよ。な?カズヒロ」
「そうだな。それだけのものがあの店にあるし・・・」
干し魚をかじりながらカズヒロがうなずいた。