「月光浴」−雨宿り
(書き手:Holmes金谷)


 ぽつ、ぽつ。
「あ・・・雨」
 スクーターに乗った彼女が空を見上げると、先程まで広がっていた青空が、いつの間にか雨雲に覆われていた。
「・・・まだ1時間位かかるのになぁ〜・・・」
 ぽつぽつぽつ。
 だんだん雨脚が強くなってくる。
「・・・雨宿り、かな?」
 そう言うと、彼女は脇に有る、打ち捨てられたらしい納屋のような所にスクーターを止めて、中に入っていった。

 中に入ると、そこには先客が居た。
「あら、タカヒロ君?」
「こ、ココネ? どうしたの、こんな所に?」
 先客〜タカヒロは、中で本を読んでいた。
「今、雨が降ってきちゃってね。このまま走ってもずぶ濡れになっちゃうから、それでここで少し雨宿りかなって思って」
「そうなんだ。僕は北の町にこの本を買いに行った帰りなんだ。ちょっとだけ読んで行こうと思って、ここに入って読んでいたら、ちょうどそこにココネが来たって訳なんだ」
 そう言うと、タカヒロは本をおろした。
「ん〜、でも雨かぁ。この分だとすぐやむとは思うけど・・・」
 タカヒロは窓から外を眺める。
「ところでココネ、これからアルファの所に行くの?」
「うん。タカヒロ君は?」
「ん〜・・・そうだなぁ・・・今日はこの後ちょっと約束が有るし・・・明日あたり暇だったら顔を出すよ」
「うん。私も2〜3日泊めてもらうつもりだから」

 同時刻、少し離れた同様の納屋。
「しっかし、まさかいきなり雨降るとはねぇ」
 先程仕入れた干し肉をかじりながら、ナオキがぼやいた。
「・・・止むかな?」
 同じように干し肉をかじりながら、マサシが窓から外を眺めていた。
「ここからだと、歩いて2時間くらいだ。まあ焦る事はないさ」
 カズヒロがそうそう言いながら、こちらも同じように干し肉をかじっている。
 まあ早い話、全員で食事をしていると言うだけの話だが。
「この季節にはよくある雨だ。なあに、すぐ止むさ」

 やがて、雨は止んだ。
「じゃあ、僕は自転車だから。後からのんびり行くよ」
 タカヒロがそう言いながら自転車に着いた雨粒を布で払い落とした。
「じゃあ明日にでも」
 ココネもスクーターで出発する。

「お、止んだみたいだ」
 スクーターが走り去っていく所を見たマサシがそう言った。
「そうか。じゃあ、おれたちも出かけるとするか」
 そう言うと、彼らは荷物をまとめて再び歩きだした。
「・・・しかし、またずいぶんかかったなぁ、ここに来るまでに」
 カズヒロが思い出したようにつぶやく。
「仕方ないさ。あっちに寄って、こっちに寄って、何てことを繰り返していたんだ。結局2週間で着くはずが、一ヶ月かかっちゃって」
「でも、その分途中で農作業の手伝いやって、懐も潤ったからいいんじゃないの?」
 ナオキがそう言ったのを、残り二人が頷いた。
「まあ良いさ。さて、あとちょっとで到着するぞ」