「こせりがやってきた! ヤァ!ヤァ!ヤァ!」
(Episode:HMX−13・セリオ、HMX−12・マルチ、こせり(ToHeart)/次回投票制連載SS・その1)
その日は確か・・・。
研究所の方から、データ取りをしたいってんで、マルチが臨時メンテナンスに呼ばれて、家にはオレとセリオが二人っきりで。
まあ、特に何をするって訳でもない、そんな休日の午後だったよーな。
「・・・暇だ」
夏休みの終盤戦。レポートとかの類は既に終わらせてある。
かといって大学に行くのも何かバカくさい。特にサークルとかに入ってる訳でもねぇし。
しかし、バイトをするにも中途半端。
どこかに遊びに行くにしても中途半端。
つまりは、何をするにも中途半端だって状態。
「セリオ、何か面白い事ねぇかなぁ?」
「・・・そう言われましても・・・」
困ったような顔をして首をかしげるセリオ。
まあ、そりゃあそうだろうな。
「町に買い物にでも出るか?」
「ですが、必要な物で今買いに行く必要が有りそうな物は、特に無いのですが・・・」
「イヤ、単純にウインドショッピング。たまには二人でデートってのもいいんじゃね〜の?」
「で、デート、ですか?」
途端に顔を赤くするセリオ。
くぅ、可愛い奴め。
「そ。たまには二人っきりで遊びに行こうぜ」
うん、我ながらいいアイデアだ。
「んで、どこに行こうか・・・って、あれ?」
どこか行きたい所が有るか聞こうかと思ったら、そこにセリオの姿は無かった。
・・・と思ったら、何やら服を2、3着抱えて戻って来た。
「浩之さん、どの服がいいと思いますか?」
「・・・で、どっちがマルチに似合うと思う?」
「そうですね・・・この花柄のも、可愛いと思いますが」
町に出て来て、ウインドショッピング・・・の筈だったんだが。
『せっかくですから、今日メンテナンスで来れなかったマルチさんに、おみやげなどはいかがでしょう?』と言うセリオの一言で、新しいエプロンを探していると言う所。
「こっちの薄緑色のも、マルチの髪の毛の色と合っていていいんじゃね〜か?」
「そうですね、そちらも似合いそうですね」
「この食材は・・・むむむ、こちらのパックの方が安い様です」
「なるほど。・・・ところでその『むむむ』って、何?」
「とある御方の所でご奉公しています、私の妹の口癖です。この前会って話をしたのですが、つい、移ってしまったようです」
そんな事を話ながら食品コーナーを回ったり。
「・・・で、結局両手に荷物か」
「申し訳ありません・・・安売りと言う言葉に、最近かなり弱くて・・・」
「・・・・・・」
何つ〜か、最近のセリオ、典型的な主婦って感じ?
「ま、いいんじゃね〜の? お陰でオレが助かってる訳だし」
オレはそう言うと、セリオの頭をなでてやった。
「・・・ありがとうございます」
セリオは、顔を赤らめながら、そう言った。
とまあ、そんなこんなで帰って来たわが家。
「それでは、夕食の支度を致しますね」
そう言ってセリオは、今日買って来た(結局セリオの分も買ってやった)新しいエプロンをすると、買って来た食材を早速台所の方に持って行った。
「・・・ふう」
その後ろ姿を見送りながら、オレは居間のソファに座ると、テレビの電源を入れた。
テレビは何やらニュースを放送しているが、放送の内容は全く頭に入って居ない。
取り敢えず、ただ付けてるだけ、の状態。
・・・何か、こう言う時間もいいなぁ。
と、そうやってくつろいでいる時。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
「・・・すいません浩之さん、今ちょっと手が離せないので、出て頂けませんか?」
台所から、そんなセリオの声。
「おう、解った」
そう言って、オレは玄関に行った。
「はーい、どなた?」
『あ、あのっ、マルチです。ただいまですー』
「おう、マルチか。ちょっと待ってな」
オレはそう言って、玄関を開けてやった。
ちなみに、鍵はかけてないんだが、マルチもセリオも、必ず外から帰って来た時はチャイムを鳴らす。
そういう風に言った訳じゃね〜んだけど。
がちゃり。
「お帰り、マルチ。意外と早かったな」
「はいっ、ありがとうございます。・・・その、えーと・・・」
「ん? どした? ・・・って、お?」
口籠ってるマルチの後ろ、良く見ると、マルチよりも背丈が小さい人影が、マルチに隠れるようにして居る。
「マルチ、お前の後ろ、お客さんか?」
そう言いながらひょいっと覗き込むと・・・そこには、紅色の髪の毛と、何かどこかで見た事がある銀色のカバー。
と、当の『本人』が、マルチの後ろからひょいっと顔を出した。
「せ・・・セリオ?」
そう、そこにはセリオをそのまんま小さくしたようなのが居たのだ。
「・・・・・・」
んで、そのセリオの小さいのは、何も言わずにオレの顔をじーっと見つめてる。
「・・・あ、あの・・・」
それを見て、何を言って良いのかわからない状態のマルチ。
まあ無理もない。オレもとっさの事に何を言って良いのかわからないのだから。
「浩之さん、お客さんですか?」
と、そこに、セリオがエプロンで手を拭きながらやって来た。
それを見た、その小さいセリオは、ぱあーっと表情が明るくなったかと思うと、たたたっとセリオの方に走り寄って。
んでそのまま、セリオに抱きついた。
「え?」
「ねえちゃん!」
「・・・・・・はい?」
抱きつかれたセリオは、文字どおり目を丸くしていた・・・。