「夏祭り」
(Episode:セリオ、マルチ、真理、芹香、綾香(ToHeart)/unziさん「セリオ本表紙」お礼贈呈作品)


− 1 −

「お待たせいたしました、浩之さん」
 そう言って、セリオがマルチと真理を連れて現れた。

 今日は、綾香たちと夏祭りに行く事になっていた。
 で、待ち合わせの場所でオレが待っていると、この3人がやって来たと言う訳だ。
「・・・ほ〜、これはこれは・・・」
 見ると、マルチ・真理・セリオは、浴衣を着ていた(まあ、オレも着て居るんだけど)。
 う〜ん、夏だねぇ。
 しかし、セリオ達は夏祭りの何たるかを良く理解しているなぁ。
 えらいぞ、うん。
(オレ内部、マルチ・真理・セリオポイント+1)
「夏祭りといったら、やはり浴衣だと思いまして」
 金魚模様の浴衣を着て、ポニーテルに髪をまとめたセリオは、すそを軽くもちあげ、『ちょん』と言う感じでおじぎをした。
 そのまま上目づかいでオレを見る。
「浩之さん、似合いますか?」
 うぐっ。
 ・・・しかもセリオ、つかみ所を心得てやがる。
「おおう、ばっちりおっけ〜だ!」
 ぐっ、と親指を立ててみせる。
「ありがとうございます」
 わずかに微笑んでセリオはそう言うとおじぎをした。
「浩之さん、私たちはどうですか〜?」
「あの・・・似合いますでしょうか?」
 マルチと真理が聞いて来た。
 マルチはヒマワリの模様の浴衣。真理は朝顔の模様の浴衣。
 ・・・確か、コレ見立てたのって、綾香だったよなぁ。
 綾香の奴、ずいぶん上手い見立てをしたもんだなぁ。
「おう、マルチも真理も凄く似合っていてかわいいぜ」
 そう言って、二人を引き寄せて頭をなでてやった。
「あ、ありがとうございます〜(ぽっ)」
「あのっ、あのっ・・・ありがとう・・・ございます・・・(ぽっ)」
 なでなでしてやると、二人とも頬を染めてお礼を言った。
「さて、じゃあ役者もそろった事だし、そろそろ行こうか」
「はいっ」
 嬉しそうな3人の声がハモって返って来た。


 カラン、コロン。
 カラン、コロン。
 げたの音が鳴り響く。
 やっぱ、夏はコレだよ、コレ!
 などと一人で悦に入っていると・・・。
「何にやけてるのよ?」
「どわっ!」
 目の前の暗がりから突然綾香が現れた。
「お前なぁ、いきなり現れるんじゃね〜よ。びっくりしただろうが」
「あら、コレくらいで驚いているなんて、格闘家藤田浩之の名が泣くわよ?」
 そう言って、綾香はクスクスと笑う。
「人間、心の準備って物があるだろうによ」
 そう言いながら、ふと視線が綾香の浴衣に行った。
 綾香の浴衣は、紺の染め抜きに井桁模様が描かれた物だった。
「へぇ・・・シックでいいじゃん」
「そお? ありがとう」
 少し嬉しそうにそう言うと、綾香はその場でくるっと回ってみせた。
 こいつもつかみ所を心得てやがる・・・。
 ・・・あれ? 待てよ?
「・・・綾香、もしかして、セリオにあの格好を教えたのって・・・」
「もちろん、わ・た・し♪ 浩之ったら、ああいうのに弱そうだからね〜」
「・・・・・・」
 当たっていて反論も出来ねぇ。
「セリオ、浩之にアレ、気に入ってもらえた?」
「は、はい」
 そう言うと、セリオはぽっと頬を染めた。
 う〜ん、何だかなぁ。
「ああっ、セリオさんずるいですぅ! 私も浩之さんに気に入ってもらえる格好を教えてください〜!」
「あ、あの・・・わ、私も・・・」
 おいおいおい、話が変な方向に向かってね〜か?
「よし、それじゃあこうしようか。マルチ、真理、お前らには特別にオレの手を貸してやる」
「「えっ?」」
「ほら、遠慮しないで、な?」
 オレがそう言うと、マルチはとても嬉しそうに、真理はわずかに頬を染めて、おずおずと手を握って来た。
「あら〜、何かちょっとうらやましいわね〜」
「・・・・・・」
 綾香とセリオは、物欲しそうな目で見ているし。
「あのなぁ・・・んな事言ったってしょうがね〜だろう? それよりも、行こうぜ」
 オレがそう言ったので、綾香は肩をすくめると歩き出した。
「ところで、芹香先輩は?」
 ふと、まわりを見渡しながらオレは尋ねた。
「姉さんなら、もう少しで来る筈よ・・・あ、ほら」
 綾香が指差す方向を見ると、街灯の下に佇んでいる芹香先輩を見つけた。
 そして、その肩には・・・マンドラゴラが乗っていた・・・。
「おうおう、藤田の兄貴、遅かったじゃね〜かよ」
「・・・悪かったな」
 ふと見ると、マンドラゴラまで浴衣を着てやがる。しかも、綾香と同じデザインだ。
 何かちょっとだけ腹が立った(笑)。
「やあ、先輩。待たせてゴメンな」
 ふるふる。
「え? そんな事はありませんって? スマンな」
 そう言って、芹香先輩の浴衣を見ると、綾香と同じ浴衣を着ていた。
「へぇ〜・・・」
 思わず、オレは綾香と芹香先輩を見比べる。
「・・・?」
「な、何よ?」
 不思議そうな顔をする先輩、オレの行動に不信感を抱いたのか訝しげに聞いて来る綾香。
「こうして見ると、鏡見てるみたいだよなぁ〜」
「?」
「それ、誉めてるの? けなしてるの?」
「けなす訳ねぇだろ? 改めて思うけど、二人とも美人だよなぁ〜」
「・・・・・・(ぽっ)」
「うふふ、御誉めに預かり光栄ですわ」
「藤田の兄貴よ、オレはどうだい? 芹香様は似合ってるって言ってくれたけどよう」
 ・・・そっか、こいつも居たんだっけ。
「お、おう、いいんじゃね〜のか?」
「さんきゅ(ニヤリ)」
「・・・・・・」
 はぁ。
 何か疲れた。
「もういい、そろそろ行こうぜ」

− 2 −

 この夏祭りは、近場の神社と商店街がタイアップして行っている物だ。
 そんな事からか、出店は割と商店街関係の出店が多い。
 無論の事、定番どころはきちんと抑えてあるのがオレ好みなんだよな。

「わあ〜っ、すごいです〜!」
「・・・わあ・・・」
 マルチと真理は、すっかり周りのにぎやかさ・艶やかさに心を奪われていた。
 二人とも、目をきらきらさせてその辺をきょろきょろと見ている。
「どう、セリオ?」
「はい、こう言う雰囲気も良いですね」
 セリオも楽しんでいるようだ。
「それじゃあ、その辺適当に冷やかしてくか」
「そうね。じゃあ、まずはアレからかな?」
 綾香が指差した先には、金魚すくいが有った。
「金魚すくいか・・・よし、じゃあ、やるか?」
「そうこなくっちゃ」

 〜 バトル・オブ・金魚すくい 〜

「ルールは簡単。1回でどれだけすくえるかを競って、一番すくえたヤツが勝ち。負けたヤツは勝ったヤツの金魚すくい代をおごるって事でどうだ?」
「レートが低いけど、ま、こう言うイベントだから仕方ないわね」
 オレの提案に綾香が頷いて答えた。
 芹香先輩は・・・こくこくしているから多分OKだろう。
「ところで・・・こいつら、金もってるのか?」
 マルチ達の事をオレは綾香に聞いてみた。
「うちでは彼女達をメイドとして雇っている形になっているから、ちゃんとお給料も出ているわよ」
 ほほう。
「はい、今日は頂いたお給金を持って来ましたので、夜店で遊ぶ代金は問題有りません」
「じゃあ問題ねぇな。よし、じゃあ誰から始める?」

 じゃんけんの結果、マルチ、オレ、綾香、芹香先輩、セリオ、真理の順番になった。
 ちなみに、マンドラゴラの奴は体の大きさの問題から見てるだけとなった。
「ま、オレは芹香様を応援させて頂くけどな」
「・・・好きにしてくれ」

 一番目になったマルチは、金魚すくいの和紙網を貰うと、いけすの前にしゃがみこんだ。
「よ〜し、頑張ります〜!」
 マルチ、何も腕まくりまでしなくたって・・・。
「えいっ! やった、すくえ・・・」
 まっすぐ上に持ち上げるマルチ。
 おいおい、そんな風に持ち上げると・・・。
 ぽちゃん。
「あ、あれれ? や、破けてしまいました〜(涙)」
 ・・・マルチ、0匹、と。

 次は、オレの番だ。
「よっしゃ、マルチ、良く見て置け。コレが金魚すくいの極意だ」
 自慢じゃないが、コレでも昔はあかり・雅史と3人で夜店を荒らし回った時代が有る。
 金魚すくいのコツは、和紙の部分ですくわないこと。輪になっている部分と持ち手とのつなぎ目のところに金魚を載せるようにしてすくうと、かなりの数がすくえる。
「よし、行くぜ! そりゃ〜!!!!!」
「はわわっ、す、すごいですっ!」
 オレは、またたく間に8匹をすくい上げた。が、9匹目をすくいかけた所で、金魚が跳ねてしまって、和紙を突き破ってしまった。
「ちっ、惜しいなぁ。ま、オレは8匹と」
「ほへ〜〜〜〜〜〜・・・」
「どうだ、マルチ、少しはすくい方解ったか?」
「は、はいっ! 今度は頑張ってすくえるようにします!」

「じゃあ、次は私ね」
 やけに自身ありげにそう言った綾香は、金魚すくいを受取ると、やはり腕まくりをしていた。
 って言うか、綾香の奴、袖を肩まで捲り上げてるけど・・・。
 ふと、その肩に目が行った。
 な、何か色っぽいかも・・・。
「あの、浩之さん、どうしたのですか? 赤くなって頭を振って?」
「い、いや、真理、な、何でもない。あは、あはははは」
「?」
 そんな事している間に、綾香の奴金魚を12匹すくい上げて居た。
 ちっ、この時点でオレの優勝は無しか。
「まあ、こんな感じかしら?」

「・・・・・・」
 次は芹香先輩の番だ。
 こう言う庶民の遊びには一切触れて居ない筈の芹香先輩。
 今までのを見て参考になりゃあいいけど・・・。
「・・・」
 と、何やら二言三言つぶやく。
 すっ、すっ。
 あっという間に2匹すくい上げて居た。
 3匹目をすくおうとした所で、和紙がやぶれてしまったが。
「・・・」
「え、何? 残念ですって? ああ、でもまあいいんじゃね〜の?」
「・・・」
「え? ちょっと魔法を使って呼び寄せすぎたって?」
 そう言えば、何かやたらと芹香先輩の金魚すくいのほうに金魚集まっていたっけ。

「それでは、私の番ですね」
 次に登場したのはセリオ。
 う〜ん、セリオの場合は、サテライトサービスと言う最強の武器が有るからなぁ。
 金魚すくいもその辺でちょちょっとやってしまうのでは・・・。
 ぽちゃん。
「・・・終わってしまいました」
「・・・って、あれ?」
 セリオのヤツ、3匹しかすくえてないぞ?
「セリオ、サテライトサービスに金魚すくいの方法とかって、無かったのか?」
 思わずオレは聞いてしまった。
「ありましたけど、使いませんでした」
「そりゃまた何で?」
「私がサテライトサービスを使うと、フェアじゃありませんから」
 ・・・セリオ・・・。
「そうか。頑張ったな」
 思わずオレはセリオの頭をなでていた。
「・・・ありがとうございます」
 わずかに頬を染めて、セリオはお礼を言った。

「じゃ、じゃあ、頑張ります」
 最後は真理だ。
 真理の場合、マルチの妹と言う事もあるけど、何よりあの性格だ。
 大丈夫かなぁ・・・と思ってみていたら、やっぱり金魚の動きにおたおたしている。
「あ、あのっ、動かないで下さい・・・(汗)」
 金魚にそう言う方が無茶だって。
 ぽちゃん。
「・・・だ、ダメでした・・・(涙)」
 ・・・真理、0匹、と。

 結局この勝負は、綾香の勝ち、マルチ・真理の負けとなった。
「残念です・・・」
「・・・ううっ・・・」
 あ〜あ、落ち込んでるよ、あの二人。
 オレがなぐさめてやろうとすると・・・。
 すっ。
 セリオが二人に何かを差し出した。
「マルチさん、真理さん。どうぞ」
 それは、セリオがすくい上げた金魚が一匹づつ入った袋だった。
「え? あの、これは?」
「金魚さんです」
「こ、これを・・・私たちに?」
「はい」
 そう言って、にっこりと笑うセリオ。
「3人で一匹づつです」
「・・うっ・・・ううっ・・・あ、ありがとうございます〜!」
「・・・あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」
 ・・・へぇ。
「セリオのヤツ、それで3匹しかすくわなかったのかな?」
 オレは、側に居た綾香に聞いてみた。
「かもね」
 綾香はそう言うと、優しい笑みを浮かべていた。


 そんな感じで、オレ達は射的・輪投げ・型抜き等々、屋台における勝負をこなして行った。

− 3 −

 ・・・ふと気がつくと、オレのそばには誰も居なかった。
 いや、他の祭り客は居る。
 一緒にやって来た連中が居なかったと言う話だ。
「やれやれ・・・。ま、そんなに広い所じゃないし、のんびり探しますかね」
 オレはそう言って歩き出した。
 と。
 くいっ。
「?」
 袖を引っ張られる感覚。
 振り向くと、袖を持った真理とセリオが居た。
「や、やっと見つけました・・・」
「何か、みなさんとはぐれてしまったみたいでしたので」
「おう、オレも気が付いたら誰もいなくてさ。探しに行こうと思っていたところだ」
「じゃ、じゃあ、みんなで探しに行きましょう」
「そうだな。じゃあ、行くか」
 そう言って歩き出した瞬間。
 ぷちっ。
「あちゃ〜」
「どうしました、浩之さん?」
「イヤ、下駄の鼻緒が切れちまってさ」
 そう言って、オレは切れた鼻緒の下駄をぷら〜んと持ち上げた。
「ちょっとお貸し下さいますか、なおしますので」
 そう言うと、セリオはオレの横にしゃがみこんだ。
「セリオ?」
「片足で立つのは大変でしょうから、私の肩につかまっていて下さい」
「お、おお」
 オレはセリオの肩に手をかけた。セリオはそのままの体制で、ハンカチを取り出すと、それを引き裂き、鼻緒の修理にかかった。
 ふと、セリオの首筋に目が行った。
 ポニーテールにしているおかげで、うなじがはっきりと見える。
 い、色っぽい・・・(汗)。
 思わず、ごくりと生つばを飲み込んでしまった。
「? 浩之さん、いかがいたしました? 手が震えておりますが」
「え? い、イヤ、何でもないよ、あは、あはははは」
「? そうですか?」


「あ、あれ、綾香お嬢様です」
 気を取り直して他のメンバーを探しはじめて、2〜3分後。
 真理が綾香を見つけたらしい。
「どれどれ・・・って、げっ」
 見ると、綾香はカラオケ大会に出ていた・・・。

 歌いおわった綾香の所に、オレ達は駆け寄った。
「こら、勝手にはぐれたと思ったら、何やってんだよ?」
「あら、はぐれたのは浩之たちの方じゃなくて? 私も探していたんだけど、見つからないから時間潰しにカラオケ大会に出ちゃったのよね〜」
「はあ、さいでっか」
「ちなみに、姉さんなら其処に居るわよ」
 綾香の指差す方を見ると、芹香先輩がいた。
 見ると、先輩は頭にクマチュウのお面をかぶり、右手に綿あめの袋をぶら下げていた。
 ・・・何か、似合ってるかも。
「ん〜、コレで後はマルチだけか〜・・・」
 そう思っていたら。
『迷子のお知らせを致します。藤田 浩之様、藤田 浩之様。迷子のメイドロボをお預かりしております。至急、迷子センターまでお越しください。繰り返します・・・』


「ううっ・・・ひ、ひろゆきさ〜ん!(泣)」
 迷子センターにたどり付いたオレ達は、そこで泣きじゃくるマルチを無事に保護した。
「全く。迷子にならないように気をつけろって言ってたのによ」
「ううっ、申し訳ありませんでした・・・ぐすっ。気が付いたら、まわりには誰も居なくて・・・」
「もう良いから、泣くなって。ほら」
 ハンカチを渡してやると、マルチはち〜んと鼻をかんだ。


「さて、じゃあみんなそろった事ですし、浩之、あれやりましょう」
「そうだな」
 そう言うと、オレは他の4人に向き直った。
「じゃあよ、近場の河原にでも行こうぜ」
「? 何をするのですか?」
「まあまあ。行けば解るって」
「・・・・・・」


 河原に行ったオレは、あらかじめ用意して置いたそれを出した。
「夏祭りに浴衣と来たら、やっぱりコレよね〜」
 綾香は嬉しそうにそう言うと、オレが取り出した花火の袋を開けた。
「・・・」
「え? 何をするかって? イヤ、せっかくだから花火でもやろうって、綾香と話していたんだ」
「花火ですか〜。それは楽しみです」
「しかし、綾香も言い方がオヤジくさいっていうのか・・・」
「それ以上言うと蹴るわよ」
 ・・・顔は笑ってるけど、目が笑ってねぇ(汗)。
「ま、浩之のオヤジ趣味には負けるけどね〜」
「え? 浩之さんって、オヤジさんだったのですか?」
 マルチが目を丸くして聞いて来る。
「あ、てめっ! 綾香、変な事言うんじゃね〜!」

 まあ、そんな軽口を叩きながら。
 オレ達は終わり行く夏を楽しむかのように、花火を楽しんだ。

「・・・で、やっぱり最後はコレな訳か」
 最後に残った、線香花火。
「じゃ、一人一本だな」
「そうね」
 それぞれが、線香花火を持って火をつける。
 チリチリチリ。

「でも、今日は本当に楽しかったです〜」
 マルチが思い出したようにそう言った。
「そうだな。ま、迷子になったのさえなければな〜」
「ううっ、その事は言わないでください〜」
「ははは、冗談だって」
「ううっ・・・」

「そうだ、真理はどうだった?」
「・・・え?」
 引き寄せられたかのように線香花火を見つめていた真理は、突然呼ばれてびっくりしたようにこちらを向いた。
「楽しかったか、今日は?」
「・・・は、はい。・・・とっても」
「そっか、それは良かったな」
「・・・はい」

「セリオはどうだった? 楽しかったか?」
「はい、とても楽しませて頂きました」
 セリオはそう言ってにっこりと笑う。
「宜しかったら、また、私たちも連れていってください」
「おお、いいぜ。んじゃ、次はどこに行こうかな〜」
「・・・・・・」
「あら、マルチとセリオと真理は連れていってくれて、私たちは無いのかしら?」
「・・・おいおい」

 そして。
 ぽとっ。
 最後の線香花火の火が、落ちた。
「・・・じゃ、帰ろうか」
「・・・そうね」
 簡単に後片づけをした後、オレ達は帰宅の途についた。

− 4 −

「じゃ、オレはココで」
 そう言うと、オレは交差点の角で立ち止まった。
「うん、じゃあ、今日はありがとうね」
 綾香がそう言う。
「何言ってるんだよ。誘ってくれたの、綾香の方じゃね〜か? お礼言うのはこっちだって」
「ふふふ・・・良いの」
 答えになってねぇよ。
「・・・ま、いいけどな」
「・・・・・・」
「うん、じゃあ、またな、先輩」
 先輩はこくこくと頷いた。
「浩之さん、今日はありがとうございました〜」
「あのっ、あ、ありがとうございました・・・」
「じゃあな、マルチ、真理」
 軽く二人の頭をひとなでしてやる。
「本日はどうもありがとうございました」
「鼻緒、ありがとうな、セリオ」
 そう言うとセリオはにっこりと笑った。
「じゃ、またな、浩之の兄貴」
「・・・兄貴はよせって」
 マンドラゴラの奴は相変らずにやりと笑ってやがる。

 そして、最後に軽く手をあげると、オレは家に向かって歩き出した。


 はぁ、しかしなんでかねぇ?
 楽しい事ってあっという間に終っちまうよなぁ〜。
「・・・・・・」
 ま、またあいつら誘ってどっか遊びに行くか。
 さしずめ、何処に行こうか。


 そんな事を考えながら、オレは家に帰っていった。

− 終わり −