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 次の日。
 ぴんぽーん、ぴんぽーん。
 あかりのチャイムを鳴らす音で起こされた。
「浩之ちゃ〜ん!」
「わ〜ったから、大きい声で呼ぶなっ!」


 外を見ると、少し雨が降っていた。
「昼には上がるみたいだよ」
 天気予報を見て来たらしいあかりがそう言う。
「そうか。じゃあ、今日は折り畳み傘でいいな」


 昼休み。
「藤田さん」
 自販機にカフェオレを買いに行ったオレは、後ろから誰かに呼ばれた。
「おっ、琴音ちゃんか」
 後ろを見ると、にこやかに微笑む琴音ちゃんが立っていた。
 ・・・そうだ、琴音ちゃんなら何か知っていないかな?
「そーだ。琴音ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど・・・」
「何ですか?」
「今度の連休って、何かあったっけ?」
「今度の連休・・・ですか?」
 そう言うと、琴音ちゃんは口元に手を当てて考え込んだ。
「え〜っと・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ごめんなさい、解らないです・・・」
 済まなそうに謝る琴音ちゃん。
「あ〜、いや、いいよ。何となく聞いて見ただけだし」
「本当にゴメンなさい」
「姫川さ〜ん!」
 と、遠くから琴音ちゃんを呼ぶ、クラスメイトらしい女生徒の声がした。
「あ、じゃあ、これで」
「おう、じゃあな」
 ぺこりとおじぎをして、クラスメイトの方に走っていく琴音ちゃん。
「・・・・・・」
 ん〜、あと知っていそうなのは・・・。


 放課後。
 裏山の神社に向かうべく、オレは校門をでた。
「は〜い、ヒロ!」
「ん?」
 呼び止められて声のした方を見ると、志保がにこやかに立っていた。
「ねえねえ、これからヤックのバリューかけて勝負しない?」
「スマンな、今日はエクストリーム同好会の日だからパスだ」
「同好会〜? そんなのサボっちゃいなさいよ」
「あのなぁ。向こうの方の約束が先なのに、それをサボっちまったら本末転倒だろうが!」
 全く、こいつは相変わらず人の迷惑とかを考えていないらしい。
「とにかく、オレは行かねぇからな」
 そう言って、返事も聞かずに歩き出す。
「あ、ち、ちょっと待ちなさいよ〜!」
 後ろで志保の騒ぐ声が聞こえたが、オレは耳を塞いで無視を決め込んだ。
「・・・・・・」
 ・・・そう言えば、今度の連休の事、志保に聞けば良かったんじゃね〜のか?
「・・・ま、明日でもいいか」


 裏山の神社の境内に入ると、丁度葵ちゃんがサンドバッグをつるす所だった。
「いよう、葵ちゃん」
「あっ、先輩!おはようございます!」
 声をかけると、葵ちゃんはいつものように爽やかな返事を返してくれた。
 相変わらず「おはようございます」なのは変わらないようだが。
「・・・今日は1年生達は来て無いのか?」
 周りを見渡しながらオレは葵ちゃんに尋ねた。
「そうですね、もう少ししたら来ると思いますけど」
 今年、エクストリーム同好会に1年生が10人も入って来た。しかも、そのうち3人は女の子である。
 これも、去年のエクストリーム大会で準優勝まで勝ちあがった葵ちゃんの名前が売れたおかげだと思う。
 ちなみに、優勝はやはり綾香だったが。
 んで、オレも出たのだが、驚くべき事にベスト8まで入る事が出来た。その為かは知らないが、エクストリーム同好会でもオレは名誉会員扱いになっている。


 その日、オレを加えて12人はいつものように練習メニューをこなして行った。
 1年生相手に、組み手のような事もやってやる。
 やがて、夕方になって練習は終わり、後片づけが終って、今日の練習は終わりとなった。
「ところでさ、葵ちゃん」
「何ですか、先輩?」
 帰り道、オレは一番聞きたかった事を尋ねた。
「今度の連休って、何かあったっけ?」
「今度の連休ですか? ・・・さあ、ちょっと・・・」
 少し考えて、葵ちゃんは困ったような表情を浮かべる。
「そうか。まあ、知らないなら仕方ないな」
「ごめんなさい、お役に立てなくて」
 済まなそうな顔をして、謝ってくる葵ちゃん。
「ああ、いいっていいて。オレも何となく聞いただけだし」


 帰りがけ、晩飯を買いに駅前商店街のスーパーに寄ったオレは、買物袋をぶら下げて家へと歩いていた。
 たたたたたっ。
 と、すぐ横を見慣れた髪型の女の子が走り過ぎて行った。
 あんな髪型をしている女の子は一人しかいない。
「お〜い、理緒ちゃ〜ん」
「は〜い!」
 理緒ちゃんは走ったままこちらを向いた。
 どたっ!
 あ〜あ、また転んでやんの。一回止まればいいのに。
「ぐすん、また転んじゃった・・・」
「やれやれ・・・止まればいいのに」
 そう言いながら、オレは理緒ちゃんを助け起こす。
「でも、いつもの事だから、もう慣れちゃっているし」
 そう言うと理緒ちゃんはこっちを向いた。
「ところで、何か用事、藤田君?」
「あ、そうそう。今度の連休って、何かあったっけ?」
 何度繰り返したか解らない質問。
「ん〜、私、バイトだけど・・・」
 ・・・お〜い。
「・・・理緒ちゃんの用事を聞いているんじゃなくて・・・」
「あ、そっか」
 えへへと笑う理緒ちゃん。
「おいおい、しっかりしてくれよ〜」
「ゴメンね。・・・う〜ん、ごめんなさい、解らないわ」
 少し考えて、理緒ちゃんはそう答えた。
 ・・・まあ、そんなもんだろう。
「あ、そうか。じゃあいいや。ごめんな、バイトの途中だろ? わざわざ呼び止めちまって」
「ううん、いいよ。じゃ、私もう行くね」
「おう、頑張れよ〜」
「は〜い!」
 そう言い残して、理緒ちゃんは走り去って行った。
 頑張れよ〜、勤労少女よ〜。
 後ろ姿を眺めながら、オレはそんな事を思っていた。


 その夜、オレはついつい深夜番組にはまってしまった。
 明日の朝は辛いぞ〜、覚悟しておこう。