「リレー小説第1段」(タイトル未定)
(Episode:オールキャスト?(To Heart)/リレーSSシリーズ・その1)
その日、セリオはいつもの様にゲーセン前のバス停でバス待ちをしていた。
さくらの花の季節も終り、季節は初夏に向かっている。髪を揺らす風にも、暑さを感じるようになってきた。
見れば、街路樹の緑色もまぶしいくらいだ。
「・・・良い季節になりましたね・・・」
誰に言うと無く、ふとつぶやいたセリオ。
と、その時。
「ふええええ〜〜〜〜〜〜ん、セリオさ〜ん!(泣)」
住宅街の方角の道から、マルチが泣きながら走って来た。
ぽてっ。
そして、セリオの数メートル前で・・・こけた。
「あうう・・・また転んじゃいました・・・ぐすっ」
セリオはマルチに近づき、助け起こした。
「はぅ、ありがとうございます〜」
「一体どうしたと言うのですか、マルチさん?」
身体に付いたホコリをはたき落としながら、セリオは尋ねた。
「セ、セリオさん、た、大変なんですぅぅ〜ど、どうしましょう。」
(セリオ)「・・・・。」
マルチは起き上がるや否や完全にパニック状態に陥いていて要領がつかめない。
「マルチさん落ち着いてください、とりあえず深呼吸をして。」
(マルチ)「あ、はい、す〜〜〜〜〜は〜〜〜〜〜〜す〜〜〜〜〜は〜〜〜〜〜。」
マルチは二回ほど深呼吸をすると大分落ち着いたようだ。
セリオはそれを確認し質問に移ることにした。
「マルチさん、一体何があったんですか?。」
「セ、セリオさん実はですね〜・・・。」
と、マルチが話し始めた時。
(謎の男)「お〜嬢〜様〜〜〜〜〜、い〜ず〜こ〜え〜〜〜〜〜」(謎でもなんでもねえ〜)
と言う、この世の物とは思えない大きな声が迫ってきた。
「あ、あの声は!!」
(セリオ)「あの方しかいませんね・・・。」
どどどどどどどどどどどどどどどどど……
(謎でもなんでもない人)「おじょお〜〜〜〜〜〜さま〜〜〜〜」
ものすごい地響きとものすごい大声がこちらに向かってくる……
どどどどどどどどどどどどど………
「………」
「………」
どどどどどどどどどどどどど……
(謎でもなんでもない人)「おじょう〜〜〜さま〜〜〜〜〜〜〜」
その声の主はセリオとマルチの目の前を、ドップラー効果かけながら、もの凄い勢いで通りすぎて行った。
「……マルチさん」
「は、はい?」
「今、通りすぎて行ったあの方が、マルチさんが大変だとおっしゃっていた事と、何か関係あるのですか?」
「い、いえ…特には……」
(セリオ)「そうですか、ではいったい何が大変なのですか?」
するとマルチは、はっと思い出した様に再び慌て始める。
「そそそそそうでした〜〜! 大変なんですぅ〜〜! 浩之さんが、浩之さんがぁ〜〜」
「浩之さん…藤田浩之さんですね? あの方がいったいどうなされたのですか?」
するとマルチは目にいっぱい涙を溜めて
「うっ、うっ、ひ、浩之さんが……行方不明になっちゃったんですぅ〜〜〜!」
…と言ったのだった。
どどどどど・・・・・・
「それは本当かぁぁぁぁぁ!?」
マルチが浩之の行方不明を告げた途端、さっきの声の主がさらに物凄い勢いで戻ってきた。
ついでにマルチの襟を掴みガックン、ガックンする。
「あう〜く、苦しいです〜(泣」
「おのれ、あの小僧め!!きっとお嬢様も一緒にさらって失踪したに違いない、待っていて下されお嬢様〜!!」
ひとしきり叫んだ後、その主は周り中の人間を弾き飛ばしながら、弾丸の様に去って行った。
「・・・・とりあえず、行方不明になったのは浩之さんだけではないと、言う事ですね。」
淡々と独り言を言うセリオの横では、マルチが目を回して気絶していた。
一方その頃・・・・
あかり、雅史、志保の3人は「浩之行方不明事件捜査本部」を設置していた。
志保「あかり、それで最後にヒロを見たのは!?」
あかり「う、うん。3日前、起こしてあげたときかな。
浩之ちゃんたらね、寝相わるくてベッドから落ちてたんだよ。口にはよだれたらしてね。
あ、でもね、すっごくかわいい寝顔しててね、やっぱり私にとっての浩之ちゃんはいつも浩之ちゃんだし、これからも浩之ちゃんは浩之ちゃん・・・」
志保「だああああああ〜〜〜っ!!!誰がノロケ話聞かせろと言ったああああ〜〜っ!!あんたに聞いたのが間違いだったわよっ!」
雅史「ねえ志保、こういうことは来栖川先輩にきいたらどうかな?」
志保「それがねえ、ここ何日か来る栖川先輩、休みなのよねえ・・・あっ!まさか!!」
あかり「な、なに?」
志保「消えた男子生徒。欠席続きのお嬢様・・・。間違いないわ!これは駆け落ちよ!!」
あかり&雅史「えええ〜〜〜〜〜〜っ!!!」
志保「とにかく、来栖川家にいくのよっ!!」三人は来栖川家へと向かった。
− 6 −
(書き手:Holmes金谷)
あかり、志保、雅史が行動を開始した頃、別なグループもまた来栖川邱を目指そうとしていた。
葵と琴音である。
(葵)「先輩と芹香先輩の事だったら、綾香さんに聞けば解ると思います!」
(琴音)「・・・でも、いきなり押しかけて行って、大丈夫でしょうか?」
不安を隠しきれない琴音。
(葵)「大丈夫です!綾香さんならきっと力を貸してくれるはずです!」
(琴音)「・・・だといいのですけど・・・」
と、その時。
二人の前に現れた人物が居た。
(二人)「あ、あなたは・・・!」
− 7 −
(書き手:羽零さん)
葵と琴音の前に現れた人物は!!
「HEY!FREEZE!」
そこには弓を持った宮内レミィが立っていた!
(葵)「宮内先輩!な、何をしてるんですか!?」
(琴音)「あ、危ないです…やめてください!」
(レミィ)「ふふふ…追い詰められた獲物は皆恐怖に震えるネ…」
(琴音)「だめです…完全にハンターモードにはいってますね」
(葵)「ハンターモード?」
(琴音)「はい。宮内さんはカリフォルニアの御出身なんです。あちらでは狩りが盛んだそうで、宮内さんも週に一度はハンティングをなさっていたんですが、日本では狩りができないので欲求がたまるとハンターモードへと変身してしまうのです」
(葵)「へ〜、姫川さんって物知りなんですね!」
(琴音)「はい、マルチちゃんに聞いたんです。たしか『初ない』のスクリーンセーバーでいじめられたとか・・・」
(葵)「そ、そうですか・・・」
(レミィ)「HEY!!おしゃべりは終わりネ!!命乞いもムダヨ!」
(葵)「…これはやるしかないようですね…」
(琴音)「仕方ありません…」
かくしてレミィVS葵・琴音の壮絶なバトルが始まった!
− 8 −
(書き手:桐原 瞬さん)
舞台はゲーセン前のバス停に戻る。
(セリオ)「まずは関わりのある人達を探して、情報を集めるのが先決でしょう…」
(マルチ)「そっそうですね、セリオさん!」
何とか再起動したマルチが頷く。が、セリオは何やら考え込んでいる様子のまま…。
(マルチ)「あの…どうしたんですか、セリオさん?」
(セリオ)「…執事の長瀬さんが捜しているのは、芹香お嬢様なのでしょうか、綾香お嬢様なのでしょうか…?」
セリオが小さく呟いた瞬間。遙か彼方に移動し続ける土煙の発生源から声が響いてきた。
(長瀬)「長瀬ではなぁ〜いッ!『セバスチャン』であ〜るッ!!」
(マルチ)「え゛…」
(セリオ)「…コホン。執事のセバスチャンさんが捜しているのは、芹香お嬢様なのでしょうか、綾香お嬢様なのでしょうか…?」
(長瀬もといセバスチャン)「芹香お嬢様であるッ!」
小さく頷くセリオは、瞳にやや迷いの色を見せていた。
(セリオ)「優先度を考えれば、私達は芹香お嬢様を捜すべきです…」
(マルチ)「えぇ゛〜っ!?そんな、セリオさんっ!浩之さんはどうするんですかぁ〜!?」
(セリオ)「マルチ…」
セリオは苦しげな表情で言い含める。
(セリオ)「私だって…その…藤田さんの事は心配ですよ。でも、私達は…」
あえて『藤田』と、姓を発音するセリオ。
(マルチ)「あうぅ〜…」
(セリオ)「私はサテライトシステムでこの近辺から探索を開始します。藤田さんのご友人を見つけ次第、マルチに手近な通信端末(註:要は公衆電話)を経由して座標データを伝えますから、そちらへ向かって情報を集めてくださいね?」
(マルチ)「わ…わかりました…」
しょんぼりと俯き、しかしすぐにキッ!と顔を上げて、マルチは駆け去った。
見送るセリオは、人工衛星へのアクセスを開始する。
(セリオ)「可視及び透過RAYカメラ・standby…プライオリティ・A+…SEARCH・start…」
検索対象である2人と、その友人達のデータを転送したセリオに、数万bitにデジタル化された、この町のデータが流れ込んでくる。
(もしも…芹香お嬢様より前に浩之さんが見つかったなら…私はどうするべきなのでしょう…?)
悩むセリオに、その「3人」の集団の情報が届いたのは、その時だった。
〜続く!カモ…〜