「セリオの耳はうさぎ耳」
(Episode:HMX−13・セリオ(ToHeart)/小SSシリーズ・その15)
ある日、長瀬のおっさんから一つの小包が届いた。
『やあ、藤田君、元気かい? たまにはセリオを連れて、こっちにも遊びに来ないか?
ところで、そのセリオのことについてだが。
我がHM研は次に発売するセリオ用のオプションパーツとして、一緒に送った物を開発した。
ついては、セリオに装着テストをお願いしたい。
どんな感じだったかとかは、後で私当てにメールを送って頂ければそれでいいよ。
では』
相変わらずおっさんらしい、用件のみの文章と言うのか。
そして、同梱されてきた、『ぷちぷち』にくるまった、何やらちょっと大きめのそれ。
さっそく開いて中をあけて見たんだが・・・。
「・・・こ、これはっ!!」
「せ、せせせセリオ〜!」
「・・・? 浩之さん、息を切らせて、どうしたのですか?」
丁度洗濯物を取り込み終わったらしいセリオが、洗濯かごを持って居間に入って来た所をつかまえる。
「これ、これ付けて」
そう言いながら、先程開いた『それ』を手渡した。
「・・・これは・・・耳カバー、ですか?」
『それ』を受け取ったセリオは、戸惑ったように首をかしげていた。
そう、セリオの手にのっている耳カバーは、『うさ耳』の形をしていたのだ。
「ああ、長瀬のおっさんが新しく開発した物らしくて。で、セリオでテストして欲しいってさ」
「そうでしたか。では、早速付けて見ますね」
そう言って、セリオは自分の手で今付けている耳カバーを外すと、『うさ耳カバー』を付けた。
「・・・いかがでしょう?」
そう言いながら、オレの方を向いて小首を傾げるような仕草をしている。
くぅ〜〜〜〜っ!
ぐっ!
オレは無言でセリオに親指を立てて見せた。
ああ、素晴らしきHM研。男の夢の一つが叶った気分だ。
「じゃ、じゃあついでだ、これとこれとこれと・・・」
そして数分後。
そこには見事にバニーガールとなったセリオが居た。
「・・・な、何か、すごく恥ずかしいのですが・・・」
少し頬を赤らめて、こちらを向きながらそう言うセリオ。
ああ、神様、オレ、もうどうなってもいいっす!
「セリオ〜!」
オレはセリオに抱きつこうとして・・・その場で固まった。
今の入り口に立って、完全に白くなっている、そいつの存在に気がついたからだ。
「あ、あ、あかり・・・」
「・・・・・・ひ、浩之ちゃん・・・これは一体・・・」
「ち、違うんだあかり! これには訳が有ってだな・・・」
「ひ、酷いよ、浩之ちゃん! いくらセリオちゃんの方がスタイルが良いからって、こんな格好させるなんて!」
「・・・・・・は?」
オレは、一瞬あかりが何を言いだしたのかが理解できなかった。
「私だって、高校のときに比べたら、胸もすこし成長したんだから。それは浩之ちゃんがよく知ってるじゃない!」
「・・・あのー、あかりさん?」
「なのに、なのに! 浩之ちゃんってば、セリオちゃんをこんな風にしちゃって・・・」
「おーい、あかりってばよー」
「酷い、酷過ぎるよ!」
・・・その後、わんわんと泣き出したあかりは、終いには実家に帰りだすまで言い出して、なだめすかすのに半日もかかってしまった。
・・・ああ、疲れた。
「浩之さん、これは戴いてしまってよろしいのでしょうか?」
「あー、もー、好きにして」
「はい、では」
そんな事があったにもかかわらず。
セリオは嬉しそうに『うさ耳カバー』を眺めていた。
何だかなぁ。