「と言う事で」
「・・・・・・」
初秋お見舞いなのです
「・・・はぁ」
 女心と秋の空。昔の人はよく言ったもんだ。

「初秋お見舞い」
(Episode:HMX−13・セリオ(ToHeart)/小SSシリーズ・その14)


 事の発端はこうだ。
 10月に入った今日。天気は秋晴れ、実に平和な日曜日。
 縁側に出て、のんびりとお茶を飲みつつお茶菓子を食いながらごろごろしていた所、突然鳴った玄関のチャイム。
 誰かと思って出てみたら、セリオがこういう格好で玄関前に居て。
 で、オレはセリオが入れてくれたお茶を飲みながら、一緒に縁側でひなたぼっこをしていると言う、そういう状況だった。

「初秋お見舞いはよ〜くわかった。で、この休みにセリオがわざわざ俺の家まで来てくれた事も感謝してる。お茶もうまいしな」
「喜んで頂けたようで、私も嬉しいです」
「・・・だけどよ・・・」
「はい?」
「その風鈴は一体なんなんだ?」
 そう、セリオは左手に風鈴を持っていたのだ。
「秋って言ったら、風鈴って季節じゃないだろ?」
 そう言うと、セリオはしばらく首をかしげて何事かを考えていたようだったが。
「・・・そう言えば、そうかもしれませんね」
「イヤ、『そうかもしれません』じゃ無くて、完璧に季節外れだと思うんだが・・・」
「・・・あまりそう言う細かい所にこだわっていると、大きな人物にはなれませんよ・・・」
「だからどうしてそう言って寂しそうな顔をするんだよ・・・」
 大体『大きな人物』って何だ?
 何だかよく解らんが、別になれなくてもオレは一向に構わないぞ。
「志は大きく持った方が良いです」
「イヤ、だからオレの将来の話じゃなくて、その風鈴だろう?」
 すっかり脱線した話を元に戻す。
「それに、何だその『もんごる』ってのは?」
「・・・・・・」
 セリオは、しばらくの間まじまじと風鈴を眺めていたが。
「・・・モンゴルとは、中国北部に位置する遊牧民族の国家で・・・」
「地理の勉強の時間じゃあない」
 オレはぺしっと、軽くセリオにツッコミを入れておく。
「・・・・・・えっと、取り敢えず」
 セリオは風鈴とオレとをかわるがわる見ていたが。
「何故風鈴で何故もんごるなのかは、綾香お嬢様にお尋ね下さい」
 がくっ。
「やっぱり、綾香のしわざか・・・」
「・・・言ってしまって、良かったのでしょうか?」
「イヤ、だいたいこの手のお約束パターンは読めてきてるから、いい」
 そして、その状況にすっかり慣れてしまってるオレ自信にも、呆れていた。

− 終わり −