「感傷の秋」
(Episode:HMX−13・セリオ(ToHeart)/突発企画シリーズおまけ(影の第7段))
「はぁっ・・・」
とある、秋の日の事。
見上げると、空には鰯雲。
秋晴れの空は、どこまでも蒼く。
そんな、秋晴れと呼ぶに相応しい、とある日曜日の事。
綾香お嬢様は、中庭で、トレーニングをするでもなく、庭石に腰かけて、何やら物憂げに溜め息をついていらっしゃいます。
どうかなさったのでしょうか?
「綾香お嬢様、お茶をお持ちいたしました」
「・・・あ、ありがとう、セリオ」
私は一礼をして、そのまま立ち去ろうとしたのですが。
「・・・あの、綾香お嬢様?」
「ん? どしたの、セリオ?」
「その、何だかお元気が無いご様子なので。どこか具合でも悪いのですか?」
私がそう聞くと、綾香お嬢様は一瞬驚いたような顔をなされましたが。
「・・・ああ、ごめんごめん、全然そう言うんじゃ無いの。具合も悪く無いし」
そう言って、にっこりと笑っています。
「そうですか。それにしては、先程から溜め息ばかりつかれていますが・・・」
「んー・・・ちょっと、ね」
綾香お嬢様は、そう言うと、少しだけうつむき加減で、またはぁっと溜め息。
「・・・セリオ、ちょっと、話、いいかな?」
「ほんのちょっとした事なんだけどね〜。浩之とケンカしちゃってさ」
庭石に座ったまま、綾香お嬢様は足をふらふらさせて。
「私が悪いってのは、解ってる。解ってるんだけど、つい、意地張っちゃって・・・」
頭の後ろで手を組んだまま、空を見上げて。
「何で私って、こうなんだろうな〜って、考えてたら、何か溜め息止まらなくなっちゃって、ね」
そう言いながら、綾香お嬢様はまた、溜め息一つ。
「・・・こう言うのを、感傷に浸るって、いうのかな・・・」
「セリオは、感傷に浸るって事、ある?」
ふと、綾香お嬢様が話題を変えてこられました。
「・・・私には、実装されていない機能です」
私は、そう答えて。
「・・・でも、綾香お嬢様のお世話をさせて頂く様になってからは、考える事が多くなりました」
「そう」
私のその答えに、それでも綾香お嬢様は嬉しそうな顔をして。
「ま、悩みなさい、機械の乙女よ。・・・なんちゃって、ね」
そう言って、何やら意味ありげな表情を浮かべていらっしゃいました。
− 終わり −