「時代劇・水戸智子」
(Episode:保科 智子(ToHeart)/「ToHeart・時代劇シリーズ」第3段)


<ナレーション>

 ♪じゃっ、じゃかじゃじゃっ、じゃかじゃじゃっ、じゃかじゃじゃかじゃじゃかじゃ・・・(テーマ曲(笑))。

 諸国漫遊の旅に出ている水戸智子ご老公の一行は、温泉宿で有名な隆山温泉へとやって来た。
 ここの温泉は肩こり・神経痛はもとより、さまざまな疾病によく効くとされていて、ご老公の「ぜひ立ち寄りたい」とのたっての希望により、一行は当地を訪れた訳だ。

<舞台裏>

智子「・・・何でうちが水戸黄門なの?」(冷たい目でにらむ)
ナレーション「だって、前回主役張りたいって言ってたじゃないですか?」(「遠山の綾香さん」参照(笑))
智子「いくら主役言うたからて、何もじじいにする事ないやん!」
ナレーション「いや、そうおっしゃられましても・・・」
智子「・・・まあええわ。その代わり、貸し1な。高くつくで」
ナレーション「・・・解りましたよ、とほほ・・・」

<ナレーション>

 ・・・気を取り直して。
 さて、ご老公ご一行が温泉街の中心へとやって来た時の事です。

<隆山温泉へと至る街道>

うっかりマルチ「ご老公様、えっと、隆山温泉って温泉以外に何か名物とかあるんですか?」
水戸智子「そうやねぇ。人伝えに聞いた話やけど、ココの土地には『鬼』の伝説があって、何でもそれを模した人形とかお菓子とか、まあそう言った物が売られてるらしいで」
マルチ「へぇ〜、そうなんですか〜」
雅史助さん「食べ物で言えば、鬼だんご4姉妹って言う、4つ連なっただんごが有名だね」
浩之格さん「他にも、何でそうなるのか知らね〜けど、鬼瓦なんてのも作って売ってるらしいぜ」
綾香お銀「でも、『鬼だんご4姉妹』なんて、いかにも『だんご○兄弟』をまねしました、って言わんばかりのネーミングセンスよね〜」

ナレーション(・・・大きなお世話です)

智子「ちなみに、そのだんごには、上から順に『千鶴、梓、楓、初音』って名前がついているらしいで。由来は解らんけどな」

 とまあ、そんな話をしながら街道を歩いて行きまして、やがて隆山温泉の宿場町が見えて来ました。

綾香「ご老公、まずは目印の、弥七の編笠を探しましょう」
智子「そうやね」

 と、その時です。

街娘あかり「いや〜、やめて下さい!」
荒くれ1セリオ「−−うるさい、お前の親父が借金返せないから、代わりにお前を身請けしようとしているだけだ」
荒くれ2琴音「そうそう、恨むんなら親を恨むんだな」

<舞台裏>

セリオ「−−ナレーションさん・・・役とは言え、人間の方に危害を加えるなんて・・・私、開発室のスタッフの方に怒られてしまいます・・・」
琴音「私も・・・もう誰も傷つけたくないのに・・・」
ナレーション「あの〜、役だからこそ重要なんですよ。お二人が悪役をやっていただく事によって、見てくれる人達が喜んでくれます。それが、悪役と言う物なのです」
セリオ・琴音「そ、そうなんですか?」
ナレーション「そうなんです。だから、頑張って役に徹して下さい」
セリオ・琴音「はいっ!」
ナレーション「・・・ふぅ、年頃の女の子って、難しいねぇ・・・」

<街道>

セリオ「−−さあ、おとなしく来るんだ」
 そうして、荒くれ1が街娘の腕をつかもうとしたその時。

 ばしっ!

セリオ「−−な、何者だっ?!」
雅史「通りがかりの旅の者だよ。ちょっと素通りする訳には行かないからね」
琴音「なんですって?! ケガしても知らないわよ!」

 ばしっ、びしっ、どかっ。

セリオ・琴音「覚えてなさいよ〜」(逃げて行く)
雅史「(ぱんぱん(手を払う音))娘さん、大丈夫かい?」
あかり「あ、ありがとう、雅史ちゃん、浩之ちゃん」
浩之「・・・あかり、劇の最中だって〜のによ・・・」
あかり「あ!そっか・・・えへへ。・・・え〜っと、危ない所をありがとうございました」
智子「何の、ただあの荒くれ達の行いがあまりにもひどかったからな、見捨てて置けなかっただけの話やねん。娘さん、良かったら訳を聞かしてくれへんか?」
あかり「はい。実は・・・」

 あかりの話はこうだった。
あかり「うちは代々続く鬼瓦の職人をやっております。おとっつぁんはこの宿場町でも5本の指に入る鬼瓦職人で、以前はここ隆山温泉の鬼瓦組合の長もやっていました」
浩之「・・・鬼瓦職人の組合? なんだそりゃ?」
綾香「しっ! 劇の途中よ」
浩之「おっと、いけね」
あかり「・・・ところが、数年前にここのお代官さまが今の矢島様に変ってから、瓦に対する税がそれまでの3倍に跳ね上がったんです。しかも、お代官さまとつるんでいる宮内屋と言う瓦屋が、雛山組って言う荒くれと手を組んでここの瓦の売り上げを独占するようになってしまいました」
智子「ふぅむ、それはまたとんでもない話やね」
あかり「おかげで商売が成り立たなくなったおとっつぁんは、すっかり酒浸りの生活になってしまって、その酒代を工面するのに借金を宮内屋にしてしまって・・・」

智子「ところで、そのおとっつぁんが作ったって言う鬼瓦、ちょっと見せてくれへんか?」
あかり「え? あ、はい、じゃあ、うちに来て下さい」
 あかりの案内で一行があかりの家に向かおうとした。
綾香「・・・ご老公様」
智子「・・・どないした?」
綾香「私は飛猿とつなぎを取って、その代官達の事を調べて来るわ」
智子「うん、頼むで」

<瓦職人の家>

 こうしてご老公達は、あかりの案内であかりの家へとやって来た。
マルチ「うわ〜、でっかい煙突です〜」
あかり「あれは、瓦を焼く『炉』なんです。普通の瀬戸物を焼く炉とはちょっと形が違います」
 そう言いながら、あかりは奥のほうから数枚の鬼瓦を取り出して来た。
あかり「これが、うちの父が焼いた鬼瓦です」
智子「どれどれ・・・へぇ、これはたいしたもんやで」
雅史「へぇ〜・・・かなり良い出来だね」
マルチ「鬼さんすごく立派です〜」
浩之「・・・オレは興味ねぇな・・・じゃ無くて、これは見事だな」

 と、奥の方から一人の男が出て来た。
源五郎「やあ、お客さんかな〜?」
浩之「うわ・・・酒くせぇ・・・」

源五郎(実はこれはね、役者さん用に来栖川香料が開発した、酒くさい匂いをだすコロンなんですよ。私自身は本当にお酒を飲んで演技しても良かったんですけどねぇ)
浩之(おっさん、演技演技)
源五郎(あ、そうですねぇ)

智子「昼間から酒とは、うらやまし・・・こほん、関心せぇへんなぁ」
源五郎「何言っているんですか。こんなご時世、酒でも飲まないとやってられませんよ〜。あかり〜、酒買ってこい〜」
あかり「おとっつぁん、もうお金が無いのよ。お殿様の献上瓦の吟味も近いのに、真面目に仕事をしてよ」
智子「ほう、献上瓦かい。それはまた、すごいやね」
源五郎「どうせ頑張ったって、宮内屋にやられて終わりですよ・・・悪いですけど、今日はお引き取り下さい」
智子「・・・・・・」

<宮内屋>

 その頃、宮内屋。
飛猿葵「へぇ・・・すると、あかりさん・・・じゃなかった、そのあかりって娘をかどあかして来たら、間違いなく今度の献上瓦はこちらが勝つと?」
 宮内屋、荒くれの親分を交えて、飛猿葵が何やら相談をしていた。
宮内屋レミィ「そうデース! だから葵、あなたの仕事は、あかりをかどあかして来る事にアリマス。しかも、スデにお代官さまには話を付けてアルね」
葵「解りました。でも私だけでは不安なので、他の人も一緒に行って頂けると有り難いのですが・・・」
荒くれ親分理緒「じゃあ、私と子分二人もついて行くよ」
葵「はい。じゃあ、その前に・・・」
レミィ「ドコ行くの?」
葵「ちょっと、はばかりに」

 はばかり(トイレ)に行くフリをして出て来た葵の前に、一人の人影が現れた。
綾香「葵、ご苦労様」
葵「あ、綾香さん・・・じゃ無かった、お銀。え〜っと、宮内屋の司令で、これからあかりさんをかどあかしに行きます」
綾香「そうなんだ。解った、ご老公様に伝えて置くわ」
葵「お願いしますね」

レミィ「じゃあ、先生、お願いネ」
葵「解りました。じゃあ、行きましょうか」
理緒・セリオ・琴音「はい」

<瓦職人の家>

 どかん!
 申し訳程度についていたしょうじの扉は、いともあっさりと蹴破られた。
セリオ「−−もう、借金の返済期限だ」
琴音「借金が払えないなら、娘は貰って・・・あれ?」
 だが、そこに瓦屋親子の姿は無く、代わりに智子一行の姿があった。
智子「本当に性懲りもなく出て来たやね」
琴音「またあなたたち! 先生、お願いします!」
 言われて、葵が前に出る。だがしかし・・・。
葵「えいっ!」
 葵の一撃が、琴音に入った。

葵(琴音、大丈夫? 痛く無い?)
琴音(大丈夫よ、ちゃんと軽くしてくれたじゃない、葵。それよりも演劇を続けなきゃ)
葵(あ、そっか)

セリオ「−−先生? な、何を?」
 葵の一撃で崩れ落ちた琴音を見て、理緒とセリオは思わず尋ねていた。
葵「あなたたちの悪事、私がこの目と耳でしっかりと確かめさせてもらいました」
理緒「なんですって! 裏切ったわね!」
葵「裏切ってなんか居ません。表返っただけです。はあっ!」
 ばしっ、びしっ。
 そう言うと同時に、葵の一撃が理緒とセリオに入った。
 崩れ落ちる二人。

セリオ(−−葵さん、い、痛いです・・・)
葵(ご、ごめんなさいっ! 手加減したつもりだったんですけど・・・。何処かおかしくなっていないですか?)
セリオ(−−・・・スキャン終了、どこにも異常は認められません)
源五郎(大丈夫、もし万が一のときには、私がちゃんと直して上げるよ)

智子「さて、証人は揃ったと。次はあんたさんやね、長瀬さん」
 と、そこに別の部屋から源五郎とあかりが出て来た。
源五郎「そこまでして・・・解りました、私も職人の端くれ。意地でも今度の献上瓦、勝たせて頂きます」
あかり「お、おとっつぁん!」
源五郎「あかり、すまんな、今まで迷惑をかけて」

<代官所>

悪代官矢島「ではこれより、殿の御前に置いて、献上瓦の吟味を執り行う。それぞれの瓦をここに出せ」
 その言葉で、その場に居た源五郎とレミィは、瓦をさしだす。
矢島「ふむ・・・決まりだ。献上瓦は宮内屋のものとする!」
智子「待ちぃな」
 と、そこに智子が登場。
矢島「な、何者だ!」
智子「越後のちりめん問屋、智えもんや。代官矢島、良く見て見ぃな。明らかに源五郎の焼いた鬼瓦の方が出来が良いと思わへんか?」
矢島「な、何を申すか! 突然押しかけて来た上に、この代官の評定を不服と申すか! 殿の御前で有るぞ、控えい!」
葵「それはどうかしら、ね!」
 そう言いながら登場した葵の言葉と共に、後ろ手に縛られた荒くれがその場に転がされた。
理緒「お、お代官さまぁ、宮内屋さん〜」
レミィ「お、お前タチ・・・」
矢島「おのれ不届き者め! 殿の御前を汚すばかりか、この者達を不当に捕らえし罪、許すわけにはいかん! 出あえ、出あえ〜!」
 その声と共に、役人たちが大量に現れる。
智子「やれやれ・・・痛い目を見ないと解らんようやな。助さん、角さん、やっておしまい!」
雅史・浩之「はっ!」

 どかっ、ばきっ。
 と、智子に切りかかる役人一人。
 ひゅ〜ん!
 ぐさっ!
役人「ぎゃっ!」
 役人の肩には、風車。
志保「志保ちゃん風車〜! やいやい悪人め、覚悟しなさい〜!」

 (以下略(ぉぃ))

 と、お殿様は事の成行をじっと眺めていたのだが、智子の顔を見るとあっと言う顔になり、あわてて矢島を止めに入った。
お殿様芹香「・・・・・・」
矢島「殿、ここは危険でございます! ささ、奥へ・・・え? あの方は悪人じゃありませんって? いやしかし・・・」
 それに気が付いた智子。
智子「その辺でええやろ」
雅史「ひかえい!」
浩之「控えい! この紋所が目に入らぬか!」
 そう言って浩之の懐から取り出される水戸徳川家の紋所。
一同「おおっ!!」
雅史「こちらにおわす方をどなたと心得る! 恐れ多くも、先の副将軍水戸智子公にあらせられるぞ!」
浩之「一同、頭が高い! ひかえおろう!」
一同「ははーっ!!」
 地面に降りて、平伏す一同。
智子「代官矢島! その方、これなる宮内屋と結託して鬼瓦の市場を操作し、私腹を肥やしたる事明白! 芹香どの、今見られた通りだ、後の処理、しかと頼みましたぞ」
芹香「・・・・・・」
浩之「え? 代官矢島、ならびにその一党の者、私腹を肥やしたばかりか御老公に対する無礼、許しがたし、きっと極刑申しつける・・・だってさ」
矢島「はは〜っ!」
智子「宮内屋、そしてその手のものも同罪や!」
レミィ・理緒・セリオ・琴音「ははぁ〜」

 智子は、ゆっくりと源五郎親子に近づいていく。
智子「さて、源五郎、コレで懲りたやろ?」
源五郎「御老公様、今までの数々の御無礼、申し訳ありませんでした。やっと、目が覚めた思いです」
智子「よかよか。これに懲りて心して瓦をつくりぃや」
源五郎「あ、ありがとうございます。これから、親子手を取り合って、瓦作りに精を出していきます」
あかり「お、おとっつあん!」
源五郎「あかり、今まで苦労をかけてすまなかった、許しておくれ」
あかり「ううっ、おとっつあん!」
智子「これにて隆山の鬼瓦は安泰や。は〜っはっはっはっは!」

<ナレーション>

 こうして悪をこらしめた御老公一行は、隆山温泉を後に旅立っていかれた。
 めでたし、めでたし。

<キャスティング>

水戸黄門   :保科 智子
助さん    :佐藤 雅史
格さん    :藤田 浩之
うっかり八兵衛:マルチ
風車の弥七  :長岡 志保
飛猿     :松原 葵
お銀     :来栖川 綾香
街娘     :神岸 あかり
街娘の父親  :長瀬源五郎
荒くれ1   :セリオ
荒くれ2   :姫川 琴音
荒くれの親分 :雛山 理緒
瓦屋「宮内屋」:宮内レミィ
悪代官    :矢島
お殿様    :来栖川 芹香

− 終わり −