「お返しに困ったら」
(Episode:佐藤 雅史、来栖川 綾香、HMX−13・セリオ/投稿作品
/ホワイトデーSS/投稿者:GNOMEさん)


「おーい雅史、今日放課後部活なかったよな、帰りちょっといいか?」
「うん、いいけど・・・なんだい?浩之」
「少し相談したいことがあるんだが・・・、ここじゃなんだから帰りはなすわ」
 いつの間にか隣にいたあかりと志保を見ながら言う。
「ちょっとまちなさいよヒロ!!もしかして私に話さない気じゃないでしょうね」
「当然そういう気だ、だいたいおまえに話したら、5割り増しにふくらました上で言いふらすじゃねえか」
「だれがいつそんなことしたってゆーのよ」
 いつも、おまえが、だ。
「そういうわけであかり、今日はこいつと一緒に帰ってくれ。ついでに、こいつの見張りも頼む」
「え!?あ、うん、わかった」
 びっくりした様子で答えるあかり。
「ちょっと〜、無視しないでよね」
 そしてわめき続ける志保。あーうるさいうるさい。


 そんなわけで放課後。
 しつこく追求してくる志保をかわして、雅史と一緒に帰ることになった。
「それで、話ってなんなんだい?」
 相変わらずさわやかな顔で聞く雅史に俺は答えた。
「ああ、そうだったな・・・。雅史、実は明後日のことについて相談したいんだ」
「明後日?・・・もしかして、ホワイトデーのこと?」
「ああ、実はお返しにどんな物を買ったらいいのかわからなくてな」
「え・・・!?もしかして今までお返しとかしたことは?」
「当然ない」
 なんだその変な物を見るような目は?
「だいたい今まで俺にくれるのなんて、あかりとあかりのおばさんぐらいだったんだぞ。それが今年は他にもいくつかもらって・・・、どうすりゃいいのか正直困ってるんだ」
「はぁ・・・、それじゃ今から一緒に買い物に行くかい?」
「ああ。そうしてくれると助かる」
 やっぱ持つべき物は親友だな、うん。
「それで、一体どれくらいもらったんだい?」
「えっとだな・・・」
 そんな感じで話しつつ2人で繁華街へと向かった。
 ちなみにもらった数は11個、笑顔魔人の雅史に比べれば少ない方だ。


「つ、疲れた」
 やっぱ俺、こういう買い物は苦手だ。それに比べてこいつは。
「ん?どうしたんだい浩之?」
 元気なもんだ
「ああ、もう買い物終わったから」
「あれ?セリオと来栖川さんの分は?」
 くっ、めざとい奴
「ああ、セリオに何買ったらいいかわかんなかったからな、明日綾香に相談することにしたんだ。綾香の分もその時一緒に聞こうかな、と」
「ふ、ぅん、そうなんだ・・・」
 なんだその意味ありげな目は。
 いいじゃないか別に・・・


 次の日、何とか連絡を取って綾香に相談することにした。
 当然セリオはいない。
「そういうわけで綾香、よろしく頼む」
「何がよろしく頼むよ、まったく・・・、で、予算はどれっくらい?」
 俺は無言で指を2本出した。
 しがない高校生にはこれが限界である。
「う〜〜ん、2枚かぁ、微妙な金額よねぇ」
 そう言うな、これでもがんばってバイトをしたんだ。
「・・・よし、決めた!!浩之、確かあなた、明日半ドンだったわよね?」
「あ、ああ、そうだけど・・・、ってなんでおまえがそんなこと知ってんだ?」
「姉さんに聞いたに決まってるじゃない」
 そりゃそうか、うっかりしてた。
「実はうちも半ドンなのよね、そんなわけだから、明日昼から一緒に買い物に行くわよ」
「いいけど・・・、明日はもう14日だぞ、間に合わないんじゃ・・・」
「何言ってるの、セリオも一緒に決まってるじゃない」
 ・・・・ん?
「おい、ちょっと待て!!それじゃわざわざおまえに相談しにきた意味がないじゃないか」
「あのねぇ、元はと言えば、前日になっていきなり相談持ちかけてくる浩之が悪いんでしょ。いくら身近にいるとは言っても、そんなに簡単に思いつかないわよ」
 う・・・、言い返す言葉もない。
「なーーんてね、結局私もわかんないのよね、あの子が何欲しいかって。そういうときは一緒に行動するのが一番よ」
 小さく舌を出して笑いながら言う綾香。
 まったく・・・、なんだかこいつのこういう顔見てると憎めなくなるんだよなぁ。
 そういや綾香とセリオって正反対のように見えて、なんだか同じようにも見える。放っておけないっていうか、なんだか気になるんだよな2人とも。
 って、こんなこと考えるのって俺だけか・・・
「ちょっと、浩之、聞いてるの?」
「あ、ああ」
「ほんとに〜?」
 いぶかしげな表情で聞いてくる綾香。
「だいじょうぶだって」
「そう?ならいいんだけど。それじゃ明日2時に駅前でね」
「お、おう」
「なーーんか心配なんだけど。ま、いっか。それじゃまた明日ね」
「ん?もう帰るのか?」
「うん、セリオにもこの話しないといけないしね」
「そか、それじゃまた明日な」
「うん、また明日」


 明けて次の日、いよいよ本番だ。
 首尾よく学校でのお返しを終え、駅に来て待ってる訳なんだが・・・
 遅い・・・
 今日は暖かいから、花粉が飛んで大変なんだぞ。
 ま、俺は花粉症なんかじゃないから大丈夫なんだが。
 それにしても遅い、何かあったんじゃないだろうな?。って、あの2人だから大丈夫だな。
「でもまあ、たまにはこんな感じで人を待つのもいいもんだな、うん」
「何がよろしいんですか?」
「う、うわ!?」
 突然の声に驚いて後ろを振り向くと、そこにはセリオが立っていた。
 心なしか緊張してる気がするんだが、・・・気のせいか?
 セリオって表情が微妙でわかりずらいんだよな。でもまあ、そこもかわいいんだが。
「どうかしましたjか?」
「いや、なんでもないよ。それよりいつからいたんだい?」
「先ほどついたばかりです、遅れてしまい申し訳ありません」
 軽く頭を下げながら答えるセリオ。
 いつもと変わらぬ表情だ、やっぱ気のせいか。
「そういや綾香はどうした」
「そうでした、綾香お嬢様は急用と言うことでこれなくなりました」
「そっか〜」
 少し残念だ。
「本当のところは、前々から用事がはいっていたのですけどね。今日は逃げ出すのに失敗してしまいました」
「おいおい、いいのかそんなので」
「こちらが伝言になります」
 セリオから渡されたメモを手にとって読んでみる。
 なになに?

『詳しいことはセリオに聞いたと思うけど、今日は行けなくなったんでそこんとこよろしく
今日はふたりっきりな訳なんだから、うまいことやんなさいよ
 あ、そうそう、週末は暇だからお返しはその時に、楽しみにしてるからね』

「なんて書いてあるんですか?」
「ん?いや、今日はふたりっきりだからがんばれってさ」
 メモをたたんでポケットに入れながら俺は答えた。
「え!?」
「それじゃいこっか」
 そうして俺は赤くなってうつむくセリオの手を引っ張って歩き始めた。

− 終わり −