「人造人間マルチ」
(Episode:HMX−12・マルチ、HMX−13・セリオ、来栖川 綾香/投稿作品/投稿者:桐原 瞬さん)


 前回までのあらすじ(マテ
 HM工学の第一人者、長瀬源五郎の研究所が襲撃された。襲ったのはHM市場を一手に握る来栖川グループ。メイドロボに、製造費用の上昇を招くような「心」は無用と、長瀬が開発を進めていた「ハートシステム」の破壊を狙ったのだ。
 完膚無きまでに破壊された研究所と、消息を絶った長瀬。だが、その直前、長瀬は偶然公園で出会った少年・藤田浩之に、未完成ながらも「ハートシステム」を搭載した試作型メイド ロボ・HMX−12「マルチ」を預けていた。不器用だが本当の優しさを持っている浩之に、『心』の完成を託したのだ。
 Xナンバーを冠する、即ち「ハートシステム」を搭載するマルチの存在を知った来栖川グループは、その破壊を目論んで次期主力商品(笑)の量産型マルチを送り込んでくる。妹とも呼ぶべき彼女達に苦戦するが、からくも勝利を収め続けるマルチと浩之。だが、しびれを切らせた来栖川グループは、遂に新型のメイドロボ試作機・HMX−13「セリオ」を叩き付ける。そしてその横には、来栖川グループの総帥の孫娘、綾香と…行方不明になっていた長瀬源五郎の姿があった!

「人造人間マルチ」第51話『絶体絶命! 死へのカウントダウン(後編)』

 ドゴオォォォン!

「はわわわ〜!」
「マルチっ!」
「−無駄です。私の能力は、姉であるあなたの300%を越えています」
「ふふっ。どう、浩之? セリオはマルチを破壊するために作られたメイドロボなのよ。ザクとは…じゃなくて、マルチタイプとは違うのよ、マルチタイプとは!」
「期待外れでしたかねぇ、藤田くん…」
「く…ッ!」
「まぁ、念には念をってことで…」
 ニヤリと嗤った綾香が、懐からチャルメララッパを取り出した。

 ちゃ〜ら〜ら〜ちゃらら〜 ちゃ〜ら〜ら〜らちゃらら〜

「ああっ! あまりの下手さに頭痛がしますー!」
 頭を抱えて崩れ落ちるマルチ。一見平然としているセリオの後頭部にも、何やら汗らしきものが浮かんでいる。
「ほっといてよっ!」
 真っ赤な顔で怒鳴ってから、再び綾香が演奏を始める。

 ちゃ〜ら〜ら〜ちゃらら〜 ちゃ〜ら〜ら〜らちゃらら〜

「−マルチ姉さん。『あなた』を、消去します…!」
 セリオの腕が、振り上がる。
「マルチぃぃぃぃぃッ!」
 薄暮の空に、浩之の絶叫が響き渡った。


 次回予告(ォィ
 HMX−13「セリオ」の圧倒的なパワーの前、風前の灯火となったマルチと浩之。
 そこに突如現れた、7人の少女達! いったい彼女達は何者なのか?!
 そして、長瀬源五郎が明かす驚愕の真実とは?!
 次回「人造人間マルチ」最終話『あなたの心 わたしのココロ』
 ご期待…しないで下さい。ありませんから(爆)

− 終わり −