「セリオちゃんの『事情』」
(Episode:HMX−13・セリオ(ToHeart)/投稿作品/投稿者:羽零さん)
「なあ、セリオ」
「―はい」
帰り道、俺はセリオに話しかけた。
どうしても、聞いておきたいことがあったんだ。
「セリオの髪って、何かピン、って立っているよな?」
「―はい…」
「でも、セリオってさらさらのストレートだし、くせっ毛にも思えないんだけど…」
「―毎日、ブローして、この髪型にしているんです」
「あ、やっぱりそうなんだ。でもなんでわざわざ?」
何となく、セリオが髪型を気にしてるのって、不思議な気がした。
「―は、はい…それは…」
「どうした?」
「―あの、笑わないで下さいね…」
「え?あ、ああ…」
「―学校に行く初日、わくわくして良く眠れなかったんです…。それで、マルチさんと一緒に、朝寝坊してしまったんです」
「ほうほう」
そっか、セリオでもそんなことがあるのか…
「―それで…寝癖がついたままで、困っていたんです」
「なるほど」
「―マルチさんは髪が短いのでさっと直ったのですが…。わたしはなかなか直らなくて、途方に暮れていたんです」
「うーむ、だろうなあ」
俺はセリオのロングヘアを見ながら、言った。
「―でも、そこで長瀬主任が言ってくれたんです」
「長瀬さんが?何て?」
すると、セリオはぽっ、と顔を赤らめて言った。
「『おっ、セリオ。その髪型も可愛いじゃないか』って…」
「………」
「―それから、この髪型が気に入ってしまって…」
なるほどなあ。セリオもかわいいとこあるじゃんか。
俺がくすくす笑ってると、
「―ひ、浩之さん!笑わないって言ったじゃないですか!」
「いや、ごめんごめん」
俺がなおもくすくす笑ってると、
「―意地悪です、浩之さん…」
あらら、怒らせちゃったかな。
「悪い悪い」
なでなで。
「―あっ…」
俺はセリオの機嫌が直るまで、頭を撫でてやっていた…
オチ無し。(笑)