「パロディ:『捨て綾』で小咄一つ」
(Episode:来栖川 綾香(ToHeart)/投稿作品/投稿者:羽零さん)


 ある日の事。
 俺がいつものように大学から帰る時に通る公園を抜けると。
 そこに、エクストリームの女王、来栖川綾香が箱に入れられて、にゃ〜にゃ〜鳴いて居た。
(イメージ:綾香にネコミミが付いて居て、箱から手だけ出してにゃ〜にゃ〜と鳴いて居る状態(笑)。箱に入って居る「楓猫」みたいな感じかな?(ぉ))

 …違った。
 にゃ〜にゃ〜とは鳴いて居ないが、目をうるうるさせて、何かを訴えるようにこっちをじっと見ている。
 ふと箱を見ると、「捨て綾です。誰か拾ってやってください」と書いてあった。
 …おいおいおい!
 ちょっと待てよ!

 捨て綾は、猫科系の目でじっとこっちを見ている。
 …夜道でもよく見えるのかな?
 猫っていえば、琴音ちゃんが猫と仲良くなるのうまかったよな〜
 そういえば、イリオモテヤマネコって絶滅したんだっけ?
 先輩のところにいた猫、元気してるかな〜
 あ、そうそう、マンドラゴラのやつも。
 いいよなあ、あいつら。
 いっつも先輩にくっついてるんだから…
 はっ!
 もしかして、寝るときも!?
 もしかすると、一緒に風呂に入ったりして!?
 うおお〜、うらやましいぜ!!

 みしっ。
 俺の顔面には綾香のかかと落しが決まっていた。


 そして数分後。
 俺の家には、ソファーの上に、バスタオルにくるまって体育座りをして居る捨て綾の姿があった…。


 ちなみに、来栖川家は悪いやつにだまされて、乗っ取られたのだ。
 こないだまで、家には捨て芹がいたのだが…


「おい、どういうことなんだよ?」
「見てのとおりよ」
 …なんか妙に余裕のある捨て猫だな…
「お前はセバスチャンと一緒に、ストリートファイトしてたんじゃないのか?」
 すると、捨て綾はため息をついて、
「それがね…セバスチャンったらぎっくり腰になっちゃって…」
「ぎっくり腰〜〜!?あのむきむき爺さんが!?」
「情けないわよねえ、本当に」
「お前…何やったんだよ?」
「ストリートファイトに決まってるでしょ」
 …絶対、普通のストリートじゃねーな…

「だから浩之…」
「あん?」
「お願い!ここに置いてよ〜」
「置いてって、お前なあ…」

 やっと先輩も自活できるようになったのに…
(ちょっと残念だったけど)
 今度はこっちかよ〜
 ちなみに芹香先輩は、何とかタックルっていうテレビ番組のオカルトコーナーで何とか教授っていうオカルト否定論者と対決している。
 …なんか、連戦連勝らしいけど。

「お願いよ〜何でもするから〜」
 …何でも…?
 あ〜んなことやこ〜んなことも?
「エッチなこと以外なら」
 …読まれてる。

「あ、そうそう、ご飯作ってあげる」
「へ?お前料理できるの?」
「こう見えても、アメリカじゃあ、ちょっとしたもんだったんだから!」
 ふ〜ん…
 まあ、こいつがそう言うんなら大丈夫かな?
「わかったわかった。じゃ、頼むわ」
「うん、任せて!」

 かくして俺は綾香…もとい、捨て綾を拾うことになったのだ。


 数時間後…
「浩之〜ご飯できたわよ〜」
「おお、待ちかねたぞ」
 俺はリビングに入ってきた。
 中は何とも言えない、いい匂いが立ち込めている。
「うおっ!うまそう…」
「へへー、がんばって作ったんだからねー」
 料理が上手いっていうのは本当みたいだな。

「どれどれ、まずは一口…」
 俺は目の前にあるビーフシチューを口に運んだ。
「………どう?」
「………」
「………」
「………う…」
「…う?」
「うまい!」
「ホ、ホント?」
 お世辞抜きでうまい。
 とっても上品で、なおかつコクのある…最高の出来映えだった。
「お前、本当に上手いんだなー」
「えへへ、ありがと」
 捨て綾はちょっとはにかんでいる。
 か、かわいい…

 俺は続けてビーフシチューを堪能することにした。
「しかし…こんな味、口にしたことがないなあ…」
「そお?」
「うん…なんか特別な調理法でもあんのか?」
「ううん。台所にあったレシピを参考にしたのよ」
 あかりの書いたやつだな。
「んじゃ、何でこんなに違うんだろうなあ」
「多分、素材が違うのよ」
「そっか、素材が違うのか…」
「そうそう。グラム3000円だからね」

「!?…ごほっ!ごほっ!…」
 思わず吹き出しそうになった。
「浩之、大丈夫?ほら、お水」
 ゴクゴクゴク。
「ふーっ、助かった…」
「ちゃんと噛んで食べないとダメよ」
「ああ、わかってる…じゃなくて、お前!グラム3000円って言ったよな!」
「う、うん…」
「この肉がか!?」
「そうよ、最高級の和牛だもん」
「何でそんな高いもん買うんだよ!?」
「え…?」
「いったい何グラム買ったんだ!?」
「えと…700グラム…」
 …まぢかよ…
 俺は大きくため息をついた。
「お前には経済感覚ってもんがないのかよ…」
「ごめん…」
 捨て綾はうなだれている。

「普通に買えばこんなことにならんだろ…いったいどんな買い方したんだよ…?」
「…うん…私、お買い物ってしたことなかったから…」
「おいおい!何考えてんだよ!」
「怒らないでよ…それでね、お肉屋さんに行って、聞いてみたの」
「なんて?」


 すると捨て綾は、顔を真っ赤にして、ようやく聞き取れるくらいの声で言った。

「…『大好きな人に、とびっきりおいしいビーフシチューを作ってあげたいんです』って…
 そうしたらお肉屋さんが『じゃ、これしかないね』ってあのお肉を出してくれたの…」

「………」
「………」
「………」
「………綾香…」
「あ…」
 俺は捨て綾を抱きしめた。
 なんてかわいいんだ…
「綾香…怒鳴ったりしてごめんな…」
「ううん…私がへまやったんだから…」
「いや…綾香がこんなに俺のこと思ってくれてたのに…」
「浩之…」
「綾香…」

 俺達はとろけるような幸せの中にいた。


 …たとえ、明日からの生活費がなくても…(ToT)

〜終わり〜

<後書き>

 どうも、羽零です。
 本来なら人様に差し上げるような代物ではないのですが。(笑)

 金谷さんの捨てセリで小咄一つのパロディとして、
 RAIN HILLS掲示板で書かせていただきました。

 …この調子だといずれ、捨てマルとか、捨て琴とかも出てきそうだ。(笑)

 それでは、妄想力を刺激してくれたHolmes金谷さんに感謝!(>o<)/

                      羽零


<解説?みたいな物>

 と、言う事で(笑)。
 さらにこのパロディシリーズ、続くとは思っても見ませんでした(笑)。

 これですが、多分私が前回のDOMさんの「捨て芹」の話で、綾香が出てこないと言う話のところで、
『ん〜、捨て綾も見たかったなぁ』
 何て描いたのがきっかけかもしれませんね(苦笑)。

 でも、何か綾香らしいお話しで、これも好きです。
 何よりパロディ自体が大好きですしね〜(笑)。


 何はともあれ、贈って頂いた羽零さんに感謝多謝。


・1999/11/08:HTML化、掲載。