「パロディ:『捨て芹』で小咄一つ」
(Episode:来栖川 芹香・神岸 あかり(ToHeart)/投稿作品/投稿者:DOMさん)


 ある日の事。
 俺がいつものように大学から帰る時に通る公園を抜けると。
 そこには…何と、来栖川家のご令嬢、芹香先輩が箱に入れられて、にゃ〜にゃ〜鳴いて居た。
(イメージ:芹香さんにネコミミが付いて居て、箱から手だけ出してにゃ〜にゃ〜と鳴いて居る状態(笑)。箱に入って居る「楓猫」+「ネコミミ芹&綾」(by unzi画伯)みたいな感じかな?(ぉ))

 …違った。
 にゃ〜にゃ〜とは鳴いて居ないが、目をうるうるさせて、何かを訴えるようにこっちをじっと見ている。
 ふと箱を見ると、「捨て芹です。誰か拾ってやってください」と書いてあった。
 …おいおいおい!
 ちょっと待てよ!

 …そして数分後。
 俺の家には、ソファーの上に、バスタオルにくるまってきちんと正座をして居る捨て芹の姿があった…。

「ねえ、どうして箱に入れられて、あんな所に置いておかれたの?」
 俺は、捨て芹…名前はわかっているが、この表現が気に入ったので、しばらくそう呼ぶ事にする(爆)…に、事情を聞いてみようとした。
 すると。
「…………」
「え? 捨てられたんです? …だって、先輩は来栖川のご令嬢じゃないか。何で捨てられることが…」
「…………」
「え? 先日、来栖川グループの会長をしていた祖父が亡くなり、来栖川家とは無関係の役員に、グループごと乗っ取られてしまいました? おまけに、言いがかりをつけられて、家も財産もすべて失った、って? で、でも、それじゃ先輩のご両親は?」
「…………」
「毎日あちこちのゴミ捨て場を歩き回っては、残飯やまだ着られそうな衣服をあさっています、って? え? そのご両親から、『来栖川家のモットーは「自活」の一語に尽きる。おまえたちも自分の道は自分で切り開きなさい。』と言われた?」
 こくこく
「それじゃ、先輩はご両親に捨てられたわけ?」
 ふるふる
「…………」
「自活の方法をあれこれ考えた挙げ句、自分で適当な箱を探して入ったって? じゃ、あの『捨て芹です。誰か拾ってやってください』って文句は…?」
「…………」
「私が書きました?」
 こくん
 …自分で自分を捨てたわけか…
 やっぱり先輩って変わってるぜ。

「綾香はどうしたの?」
「…………」
「『この拳がある限り、どこでだってやっていけるわよ!』と言って、セバスチャンを連れて旅に出た? 全国回りながら、ふたりで路上格闘試合をして見物料を稼ぐとか言ってたって? …は、はは… 相変わらずたくましい奴だな…」

 ひととおり事情はわかったが…
「先輩。これからどうするつもり?」
「…………」
「よろしければこちらに置いてください? でも、俺んち、親父もお袋も留守ばっかりで、ほとんど一人暮らしみたいなものだから…え? それでも構わない、って?」
 おいおい…どういう意味だ、それ?(汗)
「拾われたんですから、どんな境遇でも文句は言いません…って、また、取りようによってはずいぶん危険な言葉を…」
 思わず顔がにやけてしまう…って、そうじゃなくて!
「ど、どうせなら、もっといいとこに拾われたら良かったな。俺んちみたいな一般庶民じゃなくて…」
 照れ隠しにそう言うと。
 ふるふる
「…………」
「え? 浩之さん以外の人に拾われるつもりはありません? だけど、俺より前に別の誰かが通りかかって、先輩を拾っていた可能性も…」
 ふるふる
「…………」
「そんなことはないです? 浩之さんが近づくのを確認してから箱に入りましたから…って…」
 …つまり、最初から俺に拾われるつもりだったわけ?
「…………」
 ここに置いていただけませんか? と潤んだ目の捨て芹…
 だ、駄目だ、俺はその手の目に弱いんだぁ〜!

「あれ? どうして来栖川先輩が?」
 その夜、夕食をつくりに来たあかりは目を白黒させた。
「…………」
「え? 私は来栖川先輩ではありません、捨て猫です?」
 先輩… あかりにそんなこと言ったって通用するわけが…
「…………」
「これが証拠です?」
 いつの間にか、自分が入っていた箱をあかりに見せている。
「『…誰か拾ってやってください』 …ふうん…ほんとなんだ。」
 何でその程度で納得できるんだ、あかりよ?
「かわいそうな捨て猫を拾って来るなんて…やっぱり浩之ちゃんって優しいんだね?」
 あのなあ…

 翌日。
 俺が大学帰りにまた例の公園を抜けると。
 そこには…
「わん♪」
 箱に入った幼馴染みが…

 …こうして俺の家には、拾って来た猫と犬がそのまま住み着いた…

〜終わり〜

<後書き>

 「楓属性の浮気者」ことDOMでございます。
 因みに浮気の相手はマルチと芹香さん、その他数名です(ぉ

 リレーSSを除けば、ちゃんとしたHPに掲載される拙作はこれで二作目。それも他人様のパロディ。というわけで、SS書きとしてはド素人ですので、いろいろ難があると思いますが、ご容赦のほどを。

 これを書いたきっかけは、Holmes金谷さんの「『捨てセリ』で小咄一つ」を読んだ後、ふと、「もしあれが『捨て芹』だったら?(音が同じだし)」などとお馬鹿な発想が浮かんだことにあります。しかし、その時は別段、ちゃんとした文章にしようとは思ってもみなかったのですが…

 実は最近妄想力低下気味で(笑)、そのためこのまま文章が書けなくなってしまうような不安に駆られたものですから、本当にスランプなのかどうか書いて試してみることにしました。それが直接の執筆理由です。

 その程度の作品ですので、掲示板SSとしていずれ流れて消える運命だったはずが、浩之ならぬHolmes金谷さんに「拾われて」(笑)、皆さんのお目に止まることになりました。

 ところで、これを書き始めた時には、最後に「捨て綾」(笑)を拾って締めくくるつもりだったんですが、書いている途中で、「芹香さんが猫だとすると、犬に当たるのは…」と思いついたため、こういうことになってしまいました。すみません、いつも行き当たりばったりで書いているもので…(ぉ

 原作のイメージをぶち壊す駄作ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 最後になりましたが、勝手にパロってしまったにもかかわらず広いお心でお受け入れくださり、さらにはHP上への掲載の機会まで提供してくださったHolmes金谷さんに、心よりお礼申し上げます。

       1999.11.4                 by DOM


<解説?みたいな物>

 と、言う事で(笑)。
 まさか自分の作品に、またパロディが出来るとは思っても見ませんでした(爆笑)。

 一昨日・・・だったかな?
 羽零さん所の掲示板に遊びに言った所、上記のような「掲示板SS」が書き置きされていまして。
 一瞬の後、思わず大爆笑(笑)。
 何より、自分の作品にパロディが出来たってところが、すごく嬉しいですよね〜(←単純(笑))。

 そして、掲示板でうちに掲載を願い出た所、ご了承を頂きまして、さっそく飾らせて頂いた、そう言う次第でございます。

 イヤ、それにしても。
 「遠山の綾香さん」のパロディを頂いた時もそうでしたけど。
 私、こういうパロディって、大好きです(笑)。
 もし宜しければ、皆さんも描いて下さい〜(笑)。そして、宜しければうちに飾らせて下さい〜(笑)。

 何はともあれ、DOMさん、楽しい作品をありがとうございました!

・1999/11/05:HTML化、掲載。