「『風邪にネギ』で小咄一つ」
(Episode:神岸 あかり、HMX−12・マルチ、HMX−13・セリオ(ToHeart)/掲示板掲載SSシリーズ・17)
あかりが、風邪を引いたらしい。
ったく、大学生にもなって風邪なんか引くなっつ〜の。
「え〜!? だって、先週浩之ちゃんもカゼひいて寝て居たじゃない〜」
・・・忘れてた、そうでございました。
「ま、オレは治ったから、今日は休日だし、そばで看病して置いてやるよ」
「うん・・・ありがとう・・・」
「何か欲しいものとか、有るか?」
「ん・・・今は、いい・・・」
「そっか・・・」
ちなみに、セリオとマルチは二人して雑炊を作って居るらしい。
後でオレもごちになろう。
「・・・そう言えば、風邪を手っ取り早く治すには、ネギが良いって誰かが言って居たよなぁ?」
ふと、そんな話を思い出したオレは、あかりにそう聞いて見た。
「う、うん・・・どうやって使うかまでは私は知らないけど・・・」
「そうか。・・・実はな、その方法オレ知ってるんだわ」
「・・・本当に?」
「ああ。・・・何なら試して見るか?」
オレはそこでニヤリと笑う。
「・・・え、あ、あの、浩之ちゃん? それって一体どう言う方法なの?」
身の危険を察知したらしいあかりが、わずかに引きつった顔でそう聞いて来た。
むぅ、察しの良い奴め。
「ネギをな、その、ごにょごにょごにょ」
オレは、あかりの耳元でその「方法」を教えてやった。
「え・・・え、ええ〜っ!! お、お○りの穴に入れるの〜!?」
カゼのせいばかりでなく顔が赤くなるあかり。
「よーし、んじゃあかりにも早く風邪治って欲しいし、さっそく試して見ようか〜!」
「え、あ、あの、その、ちょっと・・・」
「ほーら、あかり、お○り出して見な〜」
へっへっへと、笑みを浮かべながら、どこから出したか長ねぎを右手に持って、近づいていくオレ。
「え、じょ、冗談だよね、浩之ちゃん? や、やめようよ・・・ね、お、お願い・・・」
目に涙を浮かべて、ベッドの上でわずかに逃げるあかり。
ふっふっふ、あきらめるのだぁ!
スパーン!
次の瞬間、お約束のスリッパ攻撃が炸裂した。
「・・・浩之さん?」
後ろには、右手にスリッパを構えたセリオが立って居た。
顔が笑って居ない。
・・・冗談なのに。
「ひろゆきさぁ〜ん・・・」
その横には、雑炊が入っているらしい小さな土鍋を持ったマルチが立っていた。
目に涙を浮かべて居る。
・・・だから冗談なのに。
「ええっ!? じゃ、じゃあ、やっぱり冗談だったの〜!?」
雑炊を食べて落ち着いたあかりに事の真相を話してやった。
「ああ。ついついからかってやりたくなってな。スマンスマン」
「・・・浩之ちゃん、ひどいよぉ・・・」
あかりはすっかり拗ねて居た。
「ゴメン、流石に悪かった」
オレは頭を下げた。家族とは言え、流石に悪のりが過ぎたようだ。
「・・・うん、でもそういう冗談はもうやめて置いてね」
「そうさせて頂きます」
セリオも怖かったし・・・とは口に出さなかったが。
「・・・でも、そうしたら本当はどうやって使うのですか?」
マルチが聞いてくる。
「あ、それ、私も興味あるな」
「何だ、マジで知らんのか? あかりがこう言う事を知らないってのが意外だな〜」
「私だって知らない事くらい、あるよ?」
まあそりゃあそうだろう。
「簡単に言うとな、湿布に使うんだ」
「湿布?」
「ああ。ネギの表面を軽く焼いて、首に巻く。すると、湿布の効果があって、息が楽になるんだ」
「それによって風邪が治るという物ではありませんが、風邪の場合は特に呼吸が辛くなる場合が多いので」
セリオが引き継いで説明してくれる。
「そうなんだ、初めて知ったよ」
「・・・但し、だ」
「但し?」
「首の周りがネギ臭くなる」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ゴメン、浩之ちゃん、私、やっぱり風邪薬飲んでおとなしく寝てるよ」
「そうだな」
オレもそれが良いと思った。