「『夜鳴きそば』で小咄一つ」
(Episode:HMX−12・マルチ(ToHeart)/掲示板掲載SSシリーズ・14)


 ちゃらら〜らら〜、ちゃららららら〜。


 遠くのほうで、夜泣きのチャルメラの音が鳴っているのが聞こえて来た。
「・・・たまには、夜泣きも良いかもな」
 オレはそうつぶやくと、財布を手にとって、家を後にした。


 少し歩くと、昔風の屋台が見えてくる。
「いらっしゃいませ〜」
 そして、のれんをくぐると・・・そこに、マルチがいた。
「ま、マルチ・・・何やってるんだ?(汗)」
「あ、浩之さん、こんばんわ〜。私、今日はこの屋台のお手伝いをさせて頂いているんですよ〜」
「そ・・・そうか、頑張ってくれ」
「はいっ! 頑張ります!」

 取り敢えず、オレはラーメンを一杯頼んで、その場を後にした。
 頼んだラーメンは、前にマルチがミートせんべいを作った時とは比べ物にならないくらいうまかったので、その辺は多分大丈夫だろう。


 ・・・そして、5時間後。
 様子が気になったオレは、もう一度マルチの居た屋台を見に行った。
「・・・ううっ、えぐっ・・・ひっく・・・」
 マルチは、屋台のそばで泣いていた。
「・・・ひっく・・・あうう・・・」
「ど、どうしたんだ、マルチ!?」
「ううっ・・・ひ、浩之さ〜ん! 全然売れませ〜ん!」

 ・・・これが本当の「夜泣き」そばかっ!?


 ちゃんちゃん(ぉ


 ・・・ああっ、石を投げないで(^^;


 札幌には、高速で走り去る夜泣きそばのトラックと言うのがありまして(笑)。
 仕事場でその話をしていたら、どう言う話からかは忘れましたが、
「実際に夜泣いているとか(笑)」
 と言う話が出て来まして。
「泣くって言えば、やっぱりマルチだよなぁ・・・」
 と、3分で思いついた話だったりします(笑)。
 久しぶりに、掲示板掲載SSらしく、短く簡潔に決まったんで、ちと満足。
 ・・・決まったんだろうか?(笑)


・1999/10/22:多少の修正後、HTML化、掲載。