・花壇・


「うーん・・・。」
 軽い風の吹くお天気の午後。
(どっか、出かけようかな・・・。)
 と考えながら、空の郵便受けをみています。

 ガシャン!
「んっ?」
(なに、物置から?)
 なんだろう、まさか泥棒・・・?
 一応、立てかけておいたレーキを片手に物置の方へ。
 物置といっても扉がついていてる古いもので、前の持ち主が置いていったものをそのまま利用させてもらっています。
 いっこうに大きくならない歩幅で、ゆっくりと物置に近づいていき・・・。
 物置の扉に手をかけて、一呼吸。
「うりゃ!」
 掛け声とは裏腹に、扉はがたがたと開いていきます。
「・・・ありゃま、これかぁ。」
 下をみると工具が散乱していて、工具箱が口を開けていました。
(なぁんだ。)
 と嘆いていても仕方ない。
「ほいほい。」
 開いた箱に工具を詰め込みます。
 奥にあるレンチを取ろうとした時、何かが目に入りました。
(なんだこりゃ?)
 手をのばして取ってみると鉢植えの中にシャベルが。
「おおっ!」
 さらに奥には、じょうろもありました。
 シャベルは少しサビ付いているものの充分使えそう。
(・・・!!)
 私は、工具を手早く片づけるといったん部屋へ戻りました。

「よしっ!」
 Tシャツに長ズボン、手には軍手をはめてじょうろに水を入れて準備万端。
 早速シャベルで土を掘ります。
 ザクザク、ペタペタ、ザクザク、ペタペタ・・・。
 じょうろで水をかけ、土を塗る。
 ペッタラコ、ペッタラコ・・・。
 シャベルでてっぺんを少し欠けさせて・・・。
「・・・やたー!完成!」
 みてくれの悪い、小さい富士山の完成。
(も、もうちょっと大きくしようかな?)
 もうすこし、見栄えを良くするためさらに土を掘ります。
 ザクザク、ザクザク、カツン
「ん、なに?」
 丁寧に土をどけると、ビンが埋まっています。
「まだある・・・。」
 よくみると、ビンはとなりにも埋まっている。
 結局、土をどけてみるとビンは枠型に出てきました。
「うーん、なんだろう?」
 四角い枠のビンの行列。
(うーん・・・あ!)

 この前、砂浜でおじさんと先生とで話をしていた時。
「いいものひろっちゃいましたよ!ほら!」
 海で拾ったジュースの空き瓶。
「ほらっておめえこりゃ・・・。」
「きれいですよね!海の水の色ですね。」
「・・・そうな。昔はゴロゴロしてたけどな。」
「久しぶりに見たわね。」
 私には、とてもきれいに見えたビンも2人にはどう見えたのだろう?
「あー、そういえばよう。昔はこの空き瓶で花壇なんか作ったりしてよう。」
「えっ、花壇ですか?」
(ビンの花壇?)
「ん、ああ、このビンをよう逆さにして土ん中埋めるんよ。したらこれが柵のかわりになっからよ。ねぇ、先生。」
「ええ。」
「へぇ・・・。」

(もしかしたら、これ花壇かも・・・。)
 とりあえず、富士山はそのままにして枠の中の土を耕すことに。
 雑草むしって、石どけて、土に空気いれて、じょうろで水まいて・・・。
「で、できた・・・。」
 中断していた富士山もどうにか形になって、花壇と小さい富士山の完成。
 よく見ると辺りはもう夕闇につつまれています。
「ふぅ・・・。」
 座った前に小さな富士山。後ろに大きな富士山のシルエットがみえる。
「・・・きれい。」
 空の境界線が紅から藍色に染まっていく。
(・・・花壇には、何を植えようかしらね。)

 小さい富士山と花壇。
 今日は、大収穫です。


 ・・・と言う事で、ミュージアム初の小説の投稿です。
 ん〜、いい雰囲気出していますねぇ。

(作者コメント)
 さて、カフェアルファチェーン店へ少しでも役に立てたらなぁと、短い話を書いてみました。
 文才のない私の作ですがチェーン店に飾っていただけたらと思いお送りします。
(ところでSSってショートストーリーの略ですよね、短いストーリーでMSってしたら、モビルスーツみたいでかっこいいかも・・・、いやなんでもないです(笑))

 ありがとうございました。